個性あふれる、靴修理店を訪ねて。 【靴修理ウィリアム】

革靴が持つサステイナビリティを担う重要な存在が、靴のリペアを行う修理店。各地域で独自の活動を行う修理店を訪ね修理への思いや、考えを伺った。


WILLIAM SHOE REPAIR
靴修理ウィリアム

行き着いた場所、行き着いた英国らしさ。

内装はパーマー氏と木村氏で考えたという。色使いなどが絶妙に日本っぽくない。ノーザンプトンのパブを連想した。

「そういえば豊田市に、『ウィリアム』という面白い靴修理がありますよ」。そう教えてくれたのは、本特集冒頭に登場した『グレンストック』の五宝賢太郎氏だった。五宝氏曰く、彼はナイスガイだと。なんだかよくわからないが、そのナイスガイだけを頼りに、新幹線と電車を乗り継いで豊田市にやってきた。駅からタクシーに乗って10分少々。店の外観を見た瞬間に、確かにこれはいい感じかもしれない、と思った。というのも、店の佇まいは、その鄙びた感じも含め、英国の地方の雰囲気を強く感じさせるものだったからだ。

 店の主人はウィリアム・パーマー氏。インド系の英国人である。一緒に店を切り盛りするのは、奥様の木村朋子氏。

 店内に入ると、正面奥に写真を掲示するスペースがあって、そこに古い写真がいくつか額に収められていたのが目に入った。

「これはわたしのおじいさんです。彼も靴屋でした」

 とパーマー氏。彼の家系は代々製靴産業に従事していたという。彼の父親も靴の工房を営んでいた。

「でも、子どもの頃確かに父親を手伝いはしましたが、それを引き継ごうとは全く思いませんでした。父も14年ほど前に工房を閉めてしまいましたし」

 パーマー氏は英国では会計士として働いていたという。そんな彼が語学留学していた木村氏と出会い、日本にやってくることになった。日本に来た当初は木村氏の地元・埼玉で高校の英語教員をやっていたが、そのうち英語を使う仕事でより高給なものをと、クルマの輸出に関わる仕事に就いた。その時に埼玉から豊田市へ移り住んでいる。6年ほどその仕事に就いていたが、自分で何かをやりたいという気持ちが芽生えてきた。その時に思いついたのが、靴のリペアだったという。そこですでに知人だった、靴職人の五宝氏のところへ相談に行ったのだった。その一方で奥様は、安定した仕事を辞めて自分で靴修理を始めることに当初強く反対したという。パーマー氏が五宝氏のもとで靴修理の修業をしている間、ときには五宝氏が間をとりもつように、説得したこともあったそう。半年ほどで奥様も理解するようになったそう。そして1年半ほどの修業期間を経て、現在の店舗の場所も見つかり、2017年3月に店をオープンした。

パーマー氏のおじいさんの写真。靴づくりのさまざまな作業を行っているスナップ。
近所だというハンドソーンのシューズブランド『Lapel(ラペル)』のサンプルが置いてあった。
これは英国だけのパーツかも、と見せてくれた、ダイナイトのハーフラバー。接着だけでなくて、ステッチもかけることができる。ちなみにオールソール¥10,000〜、ヒール¥2,400〜。

「豊田というマーケットもよかったのだと思います。勤労世代が多くて、私の地元の埼玉よりもずっと同世代や若い人が多いように思います。あと豊田には私たちのほかにシューリペアはありませんでした」

 このように語る木村氏。現在顧客はほぼ豊田の方で、時折名古屋から難しい修理がきたりする程度だという。

 高度な技を求めて全国から修理がやってくる工房もあれば、このように地元の人たちに利用されることで、日々忙しくしているところもある。修理職人にとって幸せなのは、果たして……いや、それぞれ別種の、尊い喜びがある、パーマー夫妻の様子を見て、そんな風に感じた。

歯車状のカッターが2連ついて、厚い底材もカットできるロータリーカッター。これも英国のファクトリーなどに見られる器械。
パーマー氏の作業スペース。出し縫いなどは外部の職人に依頼している。
ウィリアム・パーマー氏と木村朋子氏。

靴修理ウィリアム

住所:愛知県豊田市美里 4-9-9
電話:0565-47-0567
営業:10:00〜19:00 日休
HP:http://william-toyota.com


photographs_Satoko Imazu, Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌『LAST』issue.18 「Meet Independent Cobblers 個性あふれる、靴修理店を訪ねて」より抜粋。

タイトルとURLをコピーしました