スリップオンミュージアム@ISETAN MEN’S

「Slip-On Museum」の靴
2017年3月に伊勢丹新宿店のシューズフロアで開催された「スリップオンミュージアム」。OLD HAT、SUPER 8 SHOESそして小誌がピックアップしたスリップオンを、ここに再録。

Picks by OLD HAT
主として英国のヴィンテージウェアや靴を扱う東京・原宿のショップ。そのスリップオンのチョイスは、英国のビスポーク文化の厚みを感じさせる。

THOMAS(1900年頃)
「トーマス」は英国ロンドンのSAINT JAMES St.にあったビスポークシューメイカー。のちに英国のシューズメーカーに買収されてしまう伝説的ブランド。このスリップオンは100年前のパテントレザーを使ったコ ート・ドレス(宮廷衣装)用の靴と思われる。
N.TUCZEK(1940年代)
「ニコラス タックゼック(トゥーシェック)」はジョージ&アンソニー・クレヴァリー氏が修業していた工房として知られている。1968年に英国のビスポークシューメイカーに買収された。パテントレザーのインサイドエラスティックスリップオン。ドレス用。
R.R.BUNTING(1946年製)
「バンティング」は1913年創業で、英国王ジョージ5世とジョージ6世のワラントホルダー(王室御用達。パリ支店もあり1930年代から1940年代にかけて成長したビスポークシューメイカーだった。アウトサイドエラスティックのこの靴は贅沢なクロコダイルの1枚革でつくられている
POLSEN SKONE & J.GANE(1960年代後半)
後にロンドン・ジャーミンストリートの「ニュー&リングウッド」に合流するビスポークシューメイカー「ポールセン・スコーン」がイートン校のそばにある同校御用達靴店の「ジョセフ・ゲイン」を1960年代に買収した頃のタッセルスリップオン。
JOHN LOBB(1970年代)
「ジョン ロブ」のビスポークスリップオン。甲部の編み込みの意匠が細かく美しい。同店のスリップオンの定番モデルのひとつ。この靴はロイヤルワラントが2つでチャールズ王太子のワラントが入る前の1980年代前半以前のものと思われる。それ以降は3つのワラントが表示される。

Picks by SUPER 8 SHOES
東京・千駄ヶ谷でヴィンテージのアメリカ靴を中心に展開するショップ。スリップオン文化豊かなアメリカならではのバリエーション豊かなチョイス。

BASS WEEJUNS (おおよそ60年代)
アメリカを代表するローファーを多く生産しているメーカー「BASS(バス)」のハーフサドルペニーローファー「Weejuns(ウィージャンズ)」。「Nettleton(ネトルトン)」が “ ローファー ” の商標を取得していたためとウィージャンズ名付けられていたのだろうか。 こちらは、60年代生産なので、立体的なフォルムが魅力的。
CROSBY SQUARE(アメリカ おおそよ60年代)
「クロスビィ・スクエア」は1950〜60年代頃に数多くの広告が確認でき、大衆靴として人気があったのではないかと推測できる。60年代、より細目のスタイリッシュなファッションへと変化していった時期を物語るヴァンプローファー。他のメーカーではコブラヴァンプとも呼ばれ、アメリカ靴としても有名なデザイン。
NETTLETON(40年代~50年代)
1930年代に、”Loafer(ローファー)” の商標を取得した「Nettleton(ネトルトン)」。ローファーの元祖と言えば、このメーカーになるだろう。しかし、古靴界での流通足数は非常に少なく、現物を見ることは滅多にない状況。フルストラップスタイルのローファーだがサドルのデザインも独特で、歴史的価値のある一足。
EDWIN CLAPP(年代不明)
「エドウィン・クラップ」はアメリカのヴィンテージシューズの中でも、古い歴史があり非常に現存足数の少ない、往時の高級シューズメーカー。こちらはウィングチップの切りかえしが入った洒落っ気のあるデザイン。アッパーにもホワイトレザーを使用。ディテールも含めドレッシーなスタイルだ。
BOSTONIAN(50~60年代)
現在も存続している「BOSTONIAN(ボストニアン」。古い歴史があり、過去には素晴らしいクオリティとスタイルの靴を生産していた。こちらは、独特な切りかえしで、よりドレッシーなスタイル。50年代〜60年代にかけての生産と思われるが、当時のものとしても、 ハイレベルのクオリティ。

Picks by LAST
本誌のディレクションは、時代や地域などを超えて興味深いスタイルをピックアップ。中でもイタリアの靴職人・古幡雅仁氏所有のローファーは、彼の地の靴文化を物語っている。

G.Rodson(1980年代)
フランスのシューズデザイナー/ディレクターのジェラール・セネ氏が手がけていた英国製「G.Rodson (G・ロッドソン」の靴。アメリカンカルチャーをベースとした靴づくりで、この「グランド」は俳優ケリー・グラントが愛用した靴から着想されている。靴修理工房『ユニオンワークス』を率いる中川一康氏が所有。
Messina(1960年代~70年代)
ミラノの靴店「メッシーナ」のローファー。メッシーナ氏はミラノの「D’Agata」で 10年修業したのち独立。そのスタイルが継承されていることがわかる。時を重ねてなお美しいアッパーの革は、今では手に入れることが難しいクオリティ。ミラノにて靴職人として活動している古幡雅仁氏所有。
Regal(1970年代)
ブリティッシュな雰囲気のアウトフィットで知られるイラストレーターのソリマチアキラ氏。氏よりお借りした、水道橋の古めいた靴店で手に入れたという日本製「Regal(リーガル)」スリップオン。厚みあるスクエアトウ、リボンとメダルが両方配されたサドルストラップなど、単なる折衷を超越した存在感が面白い。
D’Agata(1950年代?)
ミラノに1974年まで存在した「D’Agata(ダガタ」は、義理の従兄弟だったローマのガットで修業し、その後パリの靴店を経て独立したガエター・ダガタ氏の靴店。昔日のイタリア靴職人の技と美意識を感じる靴。それはこの靴の所有者である古幡氏にも引き継がれている。
Henry Maxwell(年代不明)
英国ロンドンの「Henry Maxwell(ヘンリー・ マックスウェル」製のコンビローファー。ウェルトは縫い目を隠して上からウィールをかけた仕様で、エレガントな見た目にする効果がある。編集長私物、先日青山「ROVERS」 でハンドソーンのオールソール修理を終えたばかり。

photographs_Takao Ohta

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