大阪の靴磨き店『THE WAY THINGS GO』を訪ねて。

「靴磨き日本選手権」でトップを獲った石見豪氏の卓越した技を紹介する。

大阪・船場 「THE WAY THINGS GO」石見豪氏の技術と感性

国の登録有形文化財である「船場ビルディング」の4階に入居している「THE WAYTHINGS GO」。特徴ある店名はスイスの芸術家ピーター・フィッシュリとダヴィッド・ワイスの映像作品のタイトルという。磨き用のカウンターの周囲にはライアン・マッギンレーの写真などが飾られ、アートに関する造詣も感じさせる。右は寺島直希氏。身体にあったスーツは同店のオリジナルユニフォームだ。

銀座三越のイベント「靴磨き日本選手権」で日本一の称号を勝ちとり話題となった大阪の靴磨き店「THE WAY THINGS GO(以下TWTG)」の石見豪氏。もっともそれ以前から石見氏の評判は高く、東京などでも知られていた。大阪・船場のヴィンテージビルの一角がTWTGの店舗。若き靴磨き職人である寺島直希氏とともに店を運営している。

もともとはビジネスマンだった石見氏が靴磨き職人を目指したのは約6年前(取材訪問時)。当初は大阪・京橋で路上の靴磨きもやったという。「靴磨きを教えてもらおうと、天王寺の伝説の磨き職人のところに行ったのですが、塩を撒かれて追い返されました。そこで、この業界は見て盗むのだなと、自分や知人の靴を磨いて研究を重ね、路上でやってみたり、ほかの靴磨き職人の仕事を見ながら、技術を修得していきました。そのうちほぼわからないことがなくなっていたので、これなら商売にできるかもと、スタートしました」と石見氏。

5年半前(取材訪問時)に「TWTG」を設立、まずは出張のみの靴磨き職人としてスタートし、会社と契約して社員の靴磨きをしたり、名士の靴磨きを請け負って技術を磨いた。3年間に磨いた靴は約2万足、そしてその後、現店舗をオープンした。現在は大阪以外で靴磨きを行うことも多く、その名はさらに知られそうだ。また今後は靴磨きに限らず、服飾など「本物」を提供する活動を行うべく準備中とのこと。

「THE WAY THINGS GO」プロデュースのオリジナルブラシも展開。ホコリ落としなどに使う馬毛、磨きの工程で重要な豚毛、仕上げなどに使うヤギ毛の3種。ブラシに配したチャーミングなロゴからも、石見氏の感性が感じられる。

pig brush ¥8,000(税別)
goat brush ¥12,000(税別)
hose brushi ¥10,000(税別)

「Care & Polish by THE WAY THINGS GO」
石見豪氏がガイドするケアと磨き

①まずは馬毛のブラシで靴全体をブラッシングする。ブラシを横に持ち、ブラシ面を大きく使ってさっとホコリを落とすだけでOK。これで磨きの作業ができる状態になる。

②鏡面磨きなどの部分に残ったロウ分を落とす。使う布は、石見さんのお店(以下TWTG)だとTシャツに近い生地を使用。コットン100% で、伸び縮みして巻きやすいものを選んでいる。

③今回使ったのはブートブラックの「ハイシャインクリーナー」。有機溶剤と油脂というワックスと似た組成のものでワックスは落とす。水性クリーナーだとロウ分は残ってしまうと石見氏は語る。

④ワックスは主に有機溶剤と油脂、ロウ分で構成され、有機溶剤、油分の順で飛んで、最後にロウが表面に残って硬くなり、割れたりするという。ロウ分をとる液剤の量はほんのちょっとだけでいい。

⑤少量で表面を撫でるだけですぐに残ったロウ分がとれる。履いているうちに擦れてワックスが落ちてマットになっている箇所があるが、その質感と同じぐらいの表面になるまでワックスを落とす。

⑥3回ぐらい撫でると布につくワックスが薄いグレーになる。このぐらいになったらOK。水性クリーナーと違って、有機溶剤&油脂の組成のものは力を入れて擦っても、革を傷めることはないという。

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