長い時間をかけ現在の形に行き着いた紳士靴。それを構成する各要素を知ることは、靴の品質と価値への深い理解に繋がっている。
[『LAST』issue.11(2016年10月)初出]
紳士靴(革靴)を構成するパーツを知ろう
革製のメンズシューズは、100年ほど前にそのスタイルが確立されて以来、現代に至るまでその姿を大きく変えることなく存続してきた。その構造は、主としてアッパー(靴の上面)とボトム(靴の下面、底)、そして外側からは見ることができない内部構造という3つに大別することができる。
そこでここでは、紳士靴を構成するそれら各要素について、新進気鋭の日本のシューズブランド、『RENDO(レンド)』の靴とその靴づくりを例に、紐解いていく。
内部構造
インソール
底面にウェルトなどとすくい縫いをアウルためのリブがついた中底。レンドでは革のインソールにこだわり、ショルダー革の表面を擦って使っている。リブの貼り方などを特注したもので、土踏まずのところは8ミリほど内側に入っている。
コルクシート
インソールとアウトソール(本底)の間、リブに囲われた内側のに「詰める」充填剤。海外では粒のコルクと接着剤を混ぜた「練りコルク」を使うことが多い。このコルクシートは、底の返りが良くなるように薄くスリットを入れてある。
すくい糸
ウェルトのすくい縫いする糸。全体にチャン(松脂)がひかれて(塗られて)いる。糸自体は化繊が混じった麻糸。
ウェルト
グッドイヤーウェルテッド製法の靴には必ずある部材。アメリカ製のウェルト革を使っている。ストームウェルトなどの場合は、形状が違ってくる。
ハチマキ
踵部分にU字型に配して、アッパーとヒールをつなぐ部材。ウェルトと同じ革素材を使っている。あらかじめU字状に型づけされているものや、革の粉を固めたブロック(南方)を使う場合もある。
シャンク
底側から見て、靴の内側、ウエスト部に配され(屈曲部ではないところ)、靴の堅牢性を高める部材。レンドではより強度がある「焼き」を入れた鉄製のシャンクを使っている。
ライニング
靴の内側の革。甲から先端にかけての部分(先裏)は色の入っていないものを使用。レンドではギン面つきの牛革を使っているが、その柔らかさなどから馬革を使う場合もある。
ヒールカウンター
月型芯とも呼ばれる、踵周りの補強。はじめからヒールカップの形に成型されたものもあるが、レンドでは写真のようなくせづけされていないものを濡らして、つり込みを行う過程で成型していく。素材は床革(ギン面を削いだ後の革)を2枚貼り合わせたもの。
エンフォースメント
レースステイ部分の内側に入れる芯材。これを入れておくとレース部(フェイス)の立ち方がよくなる。素材には不織布やネル、人工皮革など使かわれる。
サイドライニング
靴の両脇に配される補強。トウパフとヒールカウンターをつなぐような形で配置されている。素材はアッパー用の革の余った部分などを、薄くすいて使う。