ヴィブラム 「コンパウンド(配合)」が拓く靴の未来

イタリアで登山靴のソールとしてスタートし、 現在はラバーソールの代名詞的存在である『ヴィブラム』。その真価は、形状とともに素材の「配合」にある。

登山のために開発されたヴィブラムのラバーソール

「私たちは、山で生まれたブランドなんです」。こう語ったのはヴィブラム・イタリアのパオロ・マヌッツィ社長。登山家であった創業者ヴィターレ・ブラマーニ氏は、安全で快適な登山を可能にするため、1937年、当時まだ革底が主流だった登山靴に、タイヤ製造の技術を応用したラバーソールを発表した。どんな状況下でも高い活動性を発揮することを愛し、「Carrarmato(カラルマート、キャタピタの意)」と名付けられたソールは、その後「タンクソール」とも呼ばれ世界中で人気を博す。

CARRARMATO(カラルマート)
イタリア語で「キャタピラ」を意味する語をその名に冠した、『ヴィブラム』の代表的なソールパターン。創業者のヴィターレ・ブラマーニが手がけたパターン。 登山のために開発され、その後はカジュアルシューズやワークシューズなどにも使われ、広く知られる存在となった。
パオロ・マヌッツィ ヴィブラム社社長

創業当初から追求しているのはグリップ性と摩擦力。軽さや薄さを追求するソール開発は多様なシーンで活躍。

「現在は登山だけではなく、ワークシューズや、ファッションなどのライフスタイル、そしてシューリペアに、幅広く高品質のアイテムを提供しています」とマヌッツィ社長。さらに彼は自分たちを「コンパウンド(配合)の会社」と称する。つまり、ゴムの組成によって、ソールに求められるさまざまな機能や性質を実現させるのだ。そして「創業当初から追求してきたことは、グリップ性とトラクション(摩擦力)」だとも。さらに彼は、それは都会生活を送る我々の足元にはまだまだ不十分で、今も必要とされている要素だと言う。「みんな、実際に転んでみないとなかなか気付かないものですが」。

現在は、より軽さや薄さを追求したソール開発の一方で、90%以上が天然由来の素材による「N-OIL」といった、環境にも配慮した配合のソールも登場している。もっとも、再生ゴムを使った「ECOSTEP」は1994年から販売されているというから、サステイナビリティに関しても同社は先駆的といえるだろう。

GUMLITE(ガムライト)
安全な移動や活動を実現するグリップ力や耐久性をもたせながら、特殊膨張ゴムを使用して、従来のラバーソールに比べ て40%程度の軽量化を実現した配合。歩行時のクッション性もある。写真はカントリー系のブーツなどにもよく使われている「ボローニャ」パターン。
MEGA GRIP(メガグリップ)
濡れた路面での制動性に優れた配合で、トレイルランニングやトレッキングシューズに数多く採用されている。写真のソールはさらに「LITEBASE」テクノロジーが盛り込まれていて、パフォーマンスや堅牢性を維持しながら、軽さと薄さを実現している。
N-OIL(ノイル)
石油の使用量を90%以上カッ トした自然由来の配合。また着色に関しても、ダヴィンチが画材として使用していた天然の色素を使っているという。写真はこの配合を使ってつくられたタンクソール。少し透明感があるような色合いが独特だ。
1mm Rubber Piece(ラバーピース)
通常は数ミリ程度の厚さになっ てしまうソールリペア用のラバーピースをヴィブラム社の技術により1ミリの厚さで実現。トップリフト用の配合、TOP85を使用したラバーシートは、耐久性と汎用性に優れた、修理用のアイテムとして同社を代表する名品。

photographs_Takao Ohta

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問い合わせ:infovjp@vibram.com
ヴィブラム ジャパン公式HP:www.vibram.com