東京ならではのスタイルを現在の気分で。

世界を見渡しても、東京でしか出合えない服。そしてスタイルがある。その担い手たちを訪ねた。

和のテイストを洋な着こなしで。(SUN/kakke 尾崎雄飛氏)

La Kagu別注の法被型ジャケット「ハッピー」¥77,000【税込】(サンカッケー)、中に着たドラゴン柄のボウリングシャツ「ドラゴンボウル」¥26,400【税込】(ヤングアンドオルセンザドライグッズストア)、L’ECHOPPE 別注のウールパンツ¥49,500【税込】(サンカッケー)。縦糸にネイビ ー、横糸にグレーを使い一見デニムに見える。足元は京都「祇園ない藤」の草履と足袋(尾崎氏私物)。

Profile 尾崎雄飛
「サンカッケー」「ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア」デザイナー。各ブランドのアイテムはそれぞれのウェブサイトまで。
「サンカッケー」http://sunkakke.jp
「ヤングアンドオルセンザドライグッズストア」http://youngandolsen.com

取材に訪れた時の装いは、足元が草履だったこともあって、どこか和風な第一印象。ただ全体の着こなしからは、和装というよりは、例えばスーツスタイルが持っているような折り目正しさも感じられる。なんとも不思議な雰囲気。「夏にアロハを着ることが多いのですが、そうなると草履とかトング型のサンダルが合うんです。今の着こなしもマテリアルには和の意味があって、でも仕立てや合わせは洋風。それが僕には過ごしやすいんです」(尾崎さん)。和と洋を自在にミックスして、快適に。まさに東京ならではのマナーといえる。

オリジナルのウールモヘア生地を使った SUN/kakke のライダースジャケット。セットアップのボトムスとしてボンデージパンツが用意されている。「モヘア=英国=パンク」という連想が形となった。ドレス的な着こなしも可能。¥99,000【税込】(サンカッケー)
尾崎さんがよく着ている古着のリーバイスの1st を、色落ちも忠実に再現したデニムジャケット。ポケットのフラップはちぎった感じの仕上げで、星型スタッズをあしらっている。¥44,000【税込】(ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア)

祖父の服の雰囲気を創造すること。Eesett&Co 中澤淳明氏)

ネイビーにブルーのストライプが入ったヘリンボーン織のリネンのジャケット¥85,800【税込】、同じ素材のトラウザーズ¥49,500【税込】、ベルト¥33,000【税込】(以上イイセットア ンドコー)。20世紀初頭のラウンジジャケットを範としたジャケットは襟元まで留める着方を意識したという。靴はジョン ロブの「DARBY」、バッグはロンドンで購入したヴィンテージのドクターバッグ。

Profile 中澤淳明
デザイナー、テーラー。東京とロンドン・サヴィルロウのテーラーでテーラーリングとカッティングを計9年間修業した後、アレキサンダー マックイーン勤務などを経て2013年に「Eesett&Co(イイセットアンドコー)」をスタート。http://eesettandco.com

「孫がやがて祖父の服を着られるように」というストーリーをベースに、テーラーがつくるレディメイドクローズを提案している「イイセットアンドコー」。「古着でこういうのあるんですか、と聞かれることもありますが、ないからつくってるんです」と語るのは、デザイナーの中澤さん。文豪が着るコート、作曲家ドヴォルザークのワードローブにありそうなトラウザーズなど、各アイテムのコンセプトにはヒストリカルな響きがあるが、「服として新しい形を追求しています」という。服の始源に思いを馳せることで、新しく創造し得るのも、東京の特権かもしれない。

大きめ(太め)でかっこいいパンツをと、今季のスペシャルファブリックであるヘビーウェイトのリネンで製作したトラウザーズ ¥49,500【税込】。腿部分にダーツをつけて、フロントはクロスプリーツ。ロールアップすると複数のシームが見える。
同じくスペシャルファブリックを使ったポンチョ。組み合わせの可能性を踏まえた、中澤さんが考える普遍的な服のかたち。¥33,000【税込】(以上イイセットアンドコー)

階級や人種の間をとった英国のデザイナーを想って。(レザー・アンド・レース 野口匠氏

90年代終わりごろにつくられた初期の「マハリシ」、防水加工が施されたコットン&ポリウレタン素材のジャ
ケット¥36,080【税込】、パンツは野口さんが発掘したデザイナー「シリン・ギルド」の「パンツ・クロスオーバ ー」¥54,780【税込】。靴はロンドンのメーカーにオーダーしたスリッパ¥41,800【税込】(以上レザー・アンド・レース)

Profile 野口 匠
ショップ「レザー・アンド・レース」オーナー。web shop と渋谷でのウィークエンド・ポップアップショップを4年間続けた後、2017年4月に現在の店舗をオープン。
東京都世田谷区世田谷2-14-3 TK BLD. 2F
金曜~月曜営業
info@leatherandlace.jp

東京・世田谷の「レザー・アンド・レース」店主・野口さんが目下フォーカスしているのは、80年代~90年代の英国のデザイナーが手がけた服。「この頃の服には、それ以前のヴィンテージにはない性格があります。例え
ば上流階級向けのテーラードウェアとワークウェアが一緒になっていたり、ミリタリーと民族衣装の要素が混在していたり。階級制度があった時代にはできなかった、“間をとる”ことをデザイナーたちがやっているんです。そこが、ひと通りヴィンテージを見てきた自分には新鮮で、感動を覚えます」と野口さん。真に面白いものを追求した結果の地平だ。

90 年代始めにつくられた「テッド ベイカー」の、レーヨン素材の刺繍入りシャツ。「どのブランドでも、初期のほうがいいと思います」と野口氏。いまの同名ブランドからは考えられないアイデアとつくりだ。価格未定。
イラン出身で英国在住のデザイナー「シリン・ギルド」のエプロンパンツ。20年以上も前から存続しているブランドを探し当て、買い付けしてきた。イランの農民服をベースとした独特なバランスのデザイン。¥41,800【税込】(以上レザー・アンド・レース)

テーラードな服をスタイルとして見せること。(アンスナム 中野靖氏

アメリカのワークシャツのパターンを使った、伊カルロ・リーバの生地使用のクレリックシャツ¥82,500【税込】。伊カチョッポリのコットン生地を使用したトラウザーズはナポリのパンツ職人による既製品で、さらに洗いをかけている、¥85,800【税込】。靴は別注した手織りのオリジナルリネンをアッパーに使った英国フォスター&サンのスリッパ¥75,900【税込】(以上アンスナム )

Profile 中野 靖
「アンスナム」デザイナー&オーナー。専門学校卒業後、世界放浪、デザイナーブランド勤務などを経て独立。現在ブランド13年目。
東京都港区白金台5丁目13-14
tel.03-6721-9192
http://www.ansnam.com

港区白金の、ビルの2階にある「アンスナム」のショップ。ラックに並んでいる服の多 は、そのまま売り物というわけではなく、基本的にはオーダーメイドのサンプルやゲージサンプルで、それらをベースに顧客のサイズ
や好みの生地を選び、注文を受ける仕組み。店内には服の他に生地のロールも数多く置かれ、中にはヴィンテージや中野氏が産地で買い付けた一点物も。扱われているアイテムには仕立てを追求したものが多い。しかし中野氏はあくまでデザイナー、スタイル提案のあるテーラードなのだ。最近はオリジナルテキスタイルにも力を入れている。

フランスで買い付けた1900年頃の手織りのベッドリネンを使ったジャケットのオーダーサンプル。ヴィンテージの子供用ジャケットを分解して、各部を大人サイズにグレーディングしたパターンを使い仕立てている。ベッドリネンのドローンワーク(ライン)は好みの場所に入れられる。¥165,000【税込】
アメリカのネルシャツのシンプルなパターンをわざと使い、ヴィンテージの強撚ウールの生地でつくったカジュアルシャツ。透けるような生地感が、これからの季節に合っている。¥60,500【税込】(以上アンスナム)

photographs_Hirotaka Hashimoto
〇 雑誌『LAST』 issue.14 より

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