世界を見渡しても、東京でしか出合えない服。そしてスタイルがある。その担い手たちを訪ねた。
和のテイストを洋な着こなしで。(SUN/kakke 尾崎雄飛氏)
Profile 尾崎雄飛
「サンカッケー」「ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア」デザイナー。各ブランドのアイテムはそれぞれのウェブサイトまで。
「サンカッケー」http://sunkakke.jp
「ヤングアンドオルセンザドライグッズストア」http://youngandolsen.com
取材に訪れた時の装いは、足元が草履だったこともあって、どこか和風な第一印象。ただ全体の着こなしからは、和装というよりは、例えばスーツスタイルが持っているような折り目正しさも感じられる。なんとも不思議な雰囲気。「夏にアロハを着ることが多いのですが、そうなると草履とかトング型のサンダルが合うんです。今の着こなしもマテリアルには和の意味があって、でも仕立てや合わせは洋風。それが僕には過ごしやすいんです」(尾崎さん)。和と洋を自在にミックスして、快適に。まさに東京ならではのマナーといえる。
祖父の服の雰囲気を創造すること。(Eesett&Co 中澤淳明氏)
Profile 中澤淳明
デザイナー、テーラー。東京とロンドン・サヴィルロウのテーラーでテーラーリングとカッティングを計9年間修業した後、アレキサンダー マックイーン勤務などを経て2013年に「Eesett&Co(イイセットアンドコー)」をスタート。http://eesettandco.com
「孫がやがて祖父の服を着られるように」というストーリーをベースに、テーラーがつくるレディメイドクローズを提案している「イイセットアンドコー」。「古着でこういうのあるんですか、と聞かれることもありますが、ないからつくってるんです」と語るのは、デザイナーの中澤さん。文豪が着るコート、作曲家ドヴォルザークのワードローブにありそうなトラウザーズなど、各アイテムのコンセプトにはヒストリカルな響きがあるが、「服として新しい形を追求しています」という。服の始源に思いを馳せることで、新しく創造し得るのも、東京の特権かもしれない。
階級や人種の間をとった英国のデザイナーを想って。(レザー・アンド・レース 野口匠氏)
Profile 野口 匠
ショップ「レザー・アンド・レース」オーナー。web shop と渋谷でのウィークエンド・ポップアップショップを4年間続けた後、2017年4月に現在の店舗をオープン。
東京都世田谷区世田谷2-14-3 TK BLD. 2F
金曜~月曜営業
info@leatherandlace.jp
東京・世田谷の「レザー・アンド・レース」店主・野口さんが目下フォーカスしているのは、80年代~90年代の英国のデザイナーが手がけた服。「この頃の服には、それ以前のヴィンテージにはない性格があります。例え
ば上流階級向けのテーラードウェアとワークウェアが一緒になっていたり、ミリタリーと民族衣装の要素が混在していたり。階級制度があった時代にはできなかった、“間をとる”ことをデザイナーたちがやっているんです。そこが、ひと通りヴィンテージを見てきた自分には新鮮で、感動を覚えます」と野口さん。真に面白いものを追求した結果の地平だ。
テーラードな服をスタイルとして見せること。(アンスナム 中野靖氏)
Profile 中野 靖
「アンスナム」デザイナー&オーナー。専門学校卒業後、世界放浪、デザイナーブランド勤務などを経て独立。現在ブランド13年目。
東京都港区白金台5丁目13-14
tel.03-6721-9192
http://www.ansnam.com
港区白金の、ビルの2階にある「アンスナム」のショップ。ラックに並んでいる服の多 は、そのまま売り物というわけではなく、基本的にはオーダーメイドのサンプルやゲージサンプルで、それらをベースに顧客のサイズ
や好みの生地を選び、注文を受ける仕組み。店内には服の他に生地のロールも数多く置かれ、中にはヴィンテージや中野氏が産地で買い付けた一点物も。扱われているアイテムには仕立てを追求したものが多い。しかし中野氏はあくまでデザイナー、スタイル提案のあるテーラードなのだ。最近はオリジナルテキスタイルにも力を入れている。
photographs_Hirotaka Hashimoto
〇 雑誌『LAST』 issue.14 より