一足の革靴は、どのようなプロセスでつくられているのだろうか。高い品質の日本製の靴としてファンが多い『スコッチグレイン』に協力いただき、同ブランドの人気セミブローグモデルが靴になる工程を取材した。
革靴の形になる過程を知る。革靴づくりは多種多様で細かな作業の集積である。
まず靴をつくるためのもととなる木型は完成品の靴からはわからず、ヒールカウンターやシャンクといった靴の形を保つために重要な要素は、アッパーやソールの内側に隠れてしまっている。さらにその製作工程では、『スコッチグレイン』のようなグッドイヤーウェルテッド製法の靴の場合、木型の形をもとに、そこに革のパーツを成形しながら、縫い合わせていくものということがよくわかる。そして革靴づくりは多種多様で細かな作業の集積であることも特徴だ。
【工場での製作工程】
リブがついたインソールのパーツを、木型に固定し、木型底面の形状にインソールを馴染ませる。
木型にトウパフを入れたアッパーを乗せ、温めたのち、靴の前部のインソールのリブと接着。
木型を入れたアッパーのかかと上部を釘で仮留めする、かかとをおろす工程。熟練職人の作業だ。
木型を入れたアッパーのかかと底面の革を絞って、インソールに20本程度の釘で固定する。
木型を入れたアッパーと、インソールのリブ部分をワイヤーで仮留め。より木型にアッパーを馴染ませる。
アッパー部とインソール、ウェルトをすくい縫い。さらにウェルトとソール部を縫うのが、グッドイヤーウェルテッドの構造。
『スコッチグレイン』ではハチマキはソールに接着した状態で作業する。この上にアッパーのかかと部が乗る。
インソール裏側に、フィラーやシャンクを接着する。靴の履き心地を左右する構造だ。
本底をフィラーなどを貼ったアッパー部に接着。接着剤を使うのは、「靴鳴き」を抑制する効果がある。
本底にミゾを掘って、本底とウェルトを出し縫いする。上糸は麻糸、下糸はナイロン糸を、ワックスをつけて使う。
より木型に馴染んだ底面形状にし、アウトステッチを均すためソールにローラーで圧をかける。
通常のグッドイヤーウェルテッドの場合は、本底のかかと部は釘で固定して、アッパー部と一体化する。
まだ本底周囲をトリミングしていない状態で、ヒールを仮留めする。熟練職人のバランス感覚が重要。
仮留めして、プレスをした後、ヒールを釘で固定。『スコッチグレイン』ではオリジナルのヒールを使用。
アウトソールやヒール周囲をアッパーにあわせて削り整える。その後色付けなどを経て靴が仕上がる。
photographs_Takao Ohta
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より