MODEL : Tyrolean Shoes
軽い履き心地とタフな革の組み合わせで「チューニング」する。『グレンストック』五宝賢太郎氏の靴の再生・最適化。
オーダーメイドの靴からスニーカーまで、さまざまな靴づくりを手がける傍ら、靴修理も行う『グレンストック』の五宝賢太郎さん。彼のもとには2足の靴を持ち込んだ。1足目は日本の靴メーカーのチロリアンシューズ。「どういう感じに変えたいですか」との問いに、もう少し履きやすく、でもチロリアンらしさは活かしたいと回答。
話題が某ブランドのチロリアンに及んだところで、「実は」と五宝さんが切り出したのは、実験的に手がけている、害獣として屠畜されたイノシシ皮の鞣しについて。自社で革の鞣しを手がけていること自体驚きだが、その毛付きの革を使うことができるという。アザラシやヘアカーフとは一線を画す質感になるかもと早速依頼。
仕上がった靴は、五宝さんが「チューニング」と呼ぶ、EVAなどを構造に取り入れて歩きやすさを実現したソールに、イノシシヘアレザーをエプロン部に使用。アッパーは硬い質感だが、馴染ませるのが楽しみだ。
【GUIDANCE(説明)】
カスタマイズのイメージスケッチを描く五宝さん。「アッパーはこんな感じでヘアレザーをつけて、ソールはチューニングを入れつつ軽いものを」とすらすらとその場で描いていく。
アウトソールにも軽量のEVAを選択。街履きでも、多少ワイルドなシーンでも快適で機能的なものを目指す。
EVA素材のシート。素材の衝撃吸収性や、どのように使うかを説明。
【PROCESS(工程)】
1_イノシシの原皮、肉側のコラーゲンを落とした状態。かなり「レア」な感じだ。2_植物タンニンを使って鞣した後ボードに張り、縮みを防ぎながら乾燥させている。3_乾燥の工程を終えた革。外側(毛の側)を上に置いた状態。
4_ミッドソールのボールジョイント部とかかと部をこのようにくり抜いて、そこに低反発性のEVAを組み込んでいる。 5,6_かつて606グラムあったチロリアンシューズ。それが、カスタマイズ後には501グラムに。100グラムの軽量化を実現している。
【FINISH(仕上がり)】
動物が毛を逆立てて威嚇する様子を表現した『poil boil』と名付けられた靴。筑波山で獲れたイノシシを、肉は食用にし、残った皮はミョウバンとお茶のタンニンで鞣して革にしたという。その一部をエプロンに使用。またアッパーの他の部分は、お茶とコーヒーで煮て染色している。今回の修理の内容は甲革交換 ¥13,200~(猪革は¥22,000)、ミッドソールEVAクッションチューニング ¥6,600、インソール加工 ¥4,400、茶葉染め ¥11,000。
1_ミッドソールには低反発EVA(60°)を配し、アウトソールもヴィブラムのEVAソールをチョイス。軽さとグリップ力を両立させている。2_イノシシヘアレザーはかなりタフな毛足。そのラギッド感にあわせて、アッパーも絶妙な色に染められている。自然なトウスプリングとEVAを使ったチューニングが、歩きやすさを実現。3_インソールにはオレンジカラーのクッションをフルソックで使用。ステッチのディテールが高級感をもたらしている。
shop information
『グレンストック 六本木店』
住所:東京都港区六本木5-16-19
電話:03-6277-7129
営業:11:00〜20:00 日休