靴と足のフィッティングについて、知るべきこととは。
革靴を選ぶ際、サイズで困った人は、案外多いのではないか。
普段履いているスニーカーのサイズで革靴を買ったら、緩くて履けなかった、という話はよく耳にする。「スポーツシューズは、捨て寸(つま先の空間)もなく、小さめにつくられていることが多いのです。それゆえスポーツシューズを普段履きにしている場合、かなり大きいサイズを選んでいることがほとんどです。これを基準に革靴を選んでしまっては、フィッティングがいいわけはありません」
このように語るのは、足に合った靴を導くエキスパート「シューフィッター」を養成・認定している一般社団法人「足と靴と健康協議会(FHA)」の木村克敏氏。
木村氏は、靴を買おうとする人の中で、自分のサイズを知らない人はかなり多いと話す。では、自身のサイズやフィッティングをどのように把握するべきなのか。木村氏によれば、まず靴のサイズは、日本で採用されているサイズと、ヨーロッパや英国、アメリカのそれとは、かなり違うものだという。「日本で標準とされている24、25といったJIS(日本産業規格)に基づいたセンチ表記は、足入れサイズ、つまり足長のことです。一方、英米の靴などに採用されている6、7といった数値は、靴をつくる木型のサイズがベースなのです」
足幅の周囲の数値が足囲であり、このようにメジャーで計測する。いわゆる第二甲と呼ばれる箇所で、その厚さや薄さで数値は変わる。
〔右〕中間楔状骨上部
高さを測定するハイトゲージで示した、中間楔状骨の位置。足を構成する骨の中でもほとんど動かない骨で、フィッティングに大きく影響する。
日本のサイズと欧米サイズの変換は一応可能だが、これはあくまで目安だということは頭に入れておきたい。では、日本サイズにおいて、私たちの足はどう表されるのだろうか。
「JISに基づいた靴のサイズは、主に足長と、足囲(ガース)の組み合わせで表されます。足囲とはボールジョイント、足の親指付け根の張り出したところと、足の小指付け根の張り出したところをつなぎ、その周囲を計測した数値によって、A、B、 C、D、E、EE、EEE、EEEE、F、Gに分類されます」
ちなみに、英米では足囲ではなく足幅、ボールウィズの数値でA〜Gと表記する。同じアルファベット表示でも根拠となっている数値が日本と英米とでは違うので、これも注意が必要だ。「JISに基づいた男性のサイズ表」には足幅も併記しているが、本来は「足の太さ」である足囲が基準である。
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FHAが認定するシューフィッターは、足の計測を行うことができる。まず計測台に立った状態で足の周囲の形状をスクライバーで描き(1)、その後足長や足幅、足囲などを計測していく。また、靴の履き口(トップライン)に当たりがちな腓骨下部(外くるぶし)の位置(2)や、靴の内部でぶつかりがちな親指の爪の高さなど(3)も計測。
さらに靴と足のフィッティングにおいて注意すべき点は、足の甲の上部、中間楔状骨のあるところだという。
「足を山に例えると、峰の一番高いところが、この骨の上です。この骨は動かないので、靴を履いた際に圧迫されるようだと、痛みをずっと感じてしまいます」この箇所についてはサイズ等で表されるわけではないため、実際に靴を履いてみないとフィッティングの良し悪しはわからない。ただこうした箇所の存在を認識したり、自身の足長や足囲などの数値を把握することは、「自分の足を物差しに靴を選ぶ」ことに繋がると木村氏は言う。
「ラストサイズの欧米の靴はもちろん、日本のサイズを採用していたとしても、既製の革靴はつくり手側の都合でつくられているものです。それを自分にあわせるために、自身の足を基準に考える、その姿勢が重要だと思います」
シューフィッターを養成・認定している機関、一般社団法人「足と靴と健康協議会」の事務局長。婦人靴・紳士靴の販売や商品開発などを経て2012年より現職。自身も上級シューフィッターの資格を有している。
photographs_Takao Ohta
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より