愛用の靴、愛着の靴。④-大学教授/作家 ポール・デ・スリー氏 『ジャコペッリ』と『ニュー&リングウッド』

靴の達人に、愛着・愛用している靴を挙げていただく連載特集の四回目。今回登場いただくのは、ス・ミズーラを愛し、シガーを愛し、ボルサリーノの帽子をこよなく愛する男、ポール・デ・スリー氏。オーダーシューズに魅せられ、これまでに100足以上のコレクションを有している。特にお気に入りの2足を今回は紹介してもらった。

ミラノ随一のダンディ ポール・デ・スリー氏。普通のス・ミズーラでは納得しないこだわり派。200年以上海底に眠っていたロシア革を使用した激レア靴も。

ス・ミズーラ(イタリア語で“オーダーメイド”を意味する言葉)を愛し、ミラノ随一のダンディとして知られるポール・デ・スリーさんが特に傾倒しているのが靴。14歳の時、『メッシーナ』で初めて靴をつくって以来、ス・ミズーラの靴だけを履き続け、100足以上を所有する。

100足以上は所有する靴のコレクション。14歳の時に初めてス・ミズーラで靴をつくった『メッシーナ』ではその後も何足もオーダー。『ニュー&リングウッド』も多い。最近は『ジャコペッリ』がお気に入り。

中でも特に気に入ってるのは2足。一足は今日履いているパルマの『ジャコペッリ』にて自分でつくった靴だ。「つくったというよりは、職人のジャコモ・バンゾラに頼み込んで作業の一部をやった程度ですが、毎週末工房に通い、完成まで80時間もかけたんですよ」

一方、もう一足は、『ニュー&リングウッド』のセミブローグ。「この革は18世紀に沈没し、20世紀前半に発見された船から回収されたロシア製。英国領で船が発見されたため、革は英国に管理されていましたが、『ニュー&リングウッド』がチャールズ皇太子から革を譲り受け、抽選で顧客に10足の靴をつくったうちの一足です」(かのメッタ・カテリーナ号の革と思われるが、靴の証明書は紛失したとのこと)。

沈没した船と共に200年以上海底に眠っていたロシア革を使って作った『ニュー&リングウッド』のシューズ。「幻の革と言われる貴重品故に大変高価で、妻から離婚されそうになりました(苦笑)」。

こだわりの靴に合わせる彼の定番は、ス・ミズーラのシングルスーツかスリーピース、それにボルサリーノ帽。正統派クラシックは常に最強だ。

シングルのスーツかスリーピースにタイドアップ、そしてボルサリーノ帽というのが彼の鉄板スタイル。今日のスーツはナポリの職人『ミンモ・ピロッツィ』、シャツは『アンブロジアーナ』のス・ミズーラ。

Paul de Sury(ポール・デ・スリー) プロフィール
1956年ロンドン生まれ。トリノ大学にてファイナンシャルマーケティングを教える大学教授。また作家としても活躍しており、作品にはエッセイや経済に関する著書の他、2008年に推理小説を発表して以降は小説の執筆も。

photographs_ Stefano Triulzi, text_Miki Tanaka
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より


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