愛用の靴、愛着の靴。③-ヴィンテージシューズコレクター ポール・ファラント氏 『エドウィン・クラップ』

LASTが靴の達人と考える方々に、愛着ある、または愛用している靴を、挙げていただく連載企画。三回目にあたる今回の出演者は、ヴィンテージシューズ&クローズコレクターのポール・ファラント氏。ヴィンテージシューズに魅せられ、長年にわたり数々の品を収集してきた。その中でも特にお気に入りのアリゲーター革のヴィンテージシューズで本日はご登場願った。

オークションハウスに出品されていたところをつくりの良さとアリゲーター革の質感に惚れ込み落札したという、1950年代製の2足。『エドウィン・クラップ(Edwin Clapp)』は今はなきマサチューセッツ州のメーカー。

ヴィンテージシューズ&クローズコレクターのポール・ファラント氏。質を知り行き着いた極上のアリゲーター革を履いて登場。

同じく1950年代製で『エドウィン・クラップ( Edwin Clapp )』で作られたアリゲーター革のプレーントウ。ブラウンのトーンやシンプルなデザインのおかげで汎用性が高く、特に気に入っているそうだ。

「ヴィンテージシューズを通してクラフトマンシップやマテリアルについて考えるようになった」と、長年にわたり数々のヴィンテージシューズをコレクションしてきたポール・ファラントさんは語る。

10代の頃よりファッションに親しみ、英国靴からデザイナーものまで様々な靴に足入れしてきたポールさんだが、ヴィンテージシューズは特別な存在なのだという。

「靴に限らず、良質なヴィンテージは質の教科書のようなものだ。」と続けた。「今では手に入らない極上の革、手間がかかって廃れてしまった技法やデザインのようなヴィンテージの醍醐味に触れる中で本当に質の良いものが何かがわかってくる。伝説的シューメーカー、ニコラス・トゥーシェクのアッパーには1インチに30針縫われているものがある。この驚異的な縫製は当時の職人の技術の高さもさることながら革の良さがあればこそだと思う。今の革でやると裂けてしまうだろう」。

こう語るポールさんの足下ではチョコレート色のアリゲーター革が豊潤な輝きを放っている。フロリダに住んでいた際手に入れたという『エドウィン・クラップ』製、1950年代のヴィンテージだ。ともすれば扱いづらいエキゾチックレザーだが、五つ星ホテルやバッキンガム宮殿で働いた経歴を持ち、数々のウェルドレッサーを身近に見てきたポールさんにとってはブリティッシュ・クラシックな装いに落とし込むのもお手の物。春夏は出番の多い特別な1足だそうだ。

迫力ある8ボタンのネイビーブレザーは『アンダーソン&シェパード』、1970年代製のヴィンテージ・ビスポーク。古い『ハケット』のシャツ、『ターンブル&アッサー』のシルクタイ、クリーム色のトラウザーズを合わせて上品に纏めあげている。

Paul Farrant(ポール・ファラント) プロフィール
ヴィンテージシューズ&クローズコレクター
ロンドン在住。バッキンガム宮殿や五つ星ホテル「ザ・ドーチェスター」での勤務を経て、現在はカントリーサイドでの領地管理を行っている。長年に渡って各地のヴィンテージショップやアンティークマーケットへ通って築いたコレクションは貴重な1足ばかり。

photographs_ Haruko Tomioka, text_Kohki Watanabe
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より


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