冬のアウター素材として定番であり、この秋冬注目の素材でもある「ツイード」。その着こなし、そしてツイードと革靴をどう装うのか。お話を伺ったのは、現在カスタムクロージングブランド『アカミネ ロイヤル ライン』を手がけている赤峰幸生氏。
カスタムクロージングブランド『アカミネ ロイヤル ライン』を手がける赤峰幸生氏が語る、秋冬の定番素材であるツイードと革靴の装い。
赤峰氏は『WAY-OUT』『グレンオーヴァー』など昭和から現在まで数々のウェアブランドを手がけ、さらに装いに限らず暮らしや文化に至る幅広い分野で様々なプロデュースを行ってきた。取材冒頭、赤峰氏は各種の羊を紹介したポスターを示して、次のように話した。
赤峰氏の考える良質なツイード生地とは。
「これがツイードのもとになるもの、英国の羊たちです」赤峰氏のツイードとの邂逅は遠く小学生の頃、父親の古いコートをリメイクしたオーバーコートに遡るというが、鮮烈な印象として残っているのは、20代〜30代より、定期的に訪れはじめたスコットランドでの経験という。
「ロンドン発の列車の窓外に見た、草を食む羊の群れに、まずは心踊ったのですが、当時の仕事で知り合った方の中に牧場主をやられていた方がいて、牧羊の現場を見せていただいたんです。ブリーダーの、刈ったばかりの毛を保管している場所へも行きました、まだ脂の香りがふんだんにする原毛に触れた経験、それがツイードという素材を理解する起点になっていると思います」
ツイード素材は脂を多く含んでいるので雨などにも強さがあり、また経年変化も楽しめるとはよくいわれることだが、赤峰氏の場合はそれが感覚の記憶として、身体で理解できているということなのだろう。そしてこうした羊のヴィジョンやイメージは、私たちがツイードなど羊毛素材に触れ着用する際にも、頭の片隅に置いておくことで、単なる着こなしだけではない、服の真価を感じることができるかもしれない。
そんな赤峰氏が現在ツイードに関して気になっているのが、「グレー」という色。「男の三原色はネイビー、グレー、ブラウンと思っています。少し前まではブラウンが軸の色だったのですが、今はグレーをクラシックな服装の中でいかに新鮮に見せていけるか、ということに興味があります」
こう語る赤峰氏が見せてくれたのが、英国の生地メーカー『MARLING&EVANS(マーリン&エヴァンズ)』によるツイード生地。無染色の羊毛を使い、羊の毛の色だけで色柄をつくっているという。「環境についての配慮がさまざま語られる昨今、こうしたオーガニックな性格を備えたものがいいのでは思います」と赤峰氏。
ツイード素材に合う「タン」カラーの革靴。
こうしたツイード・ファブリックに合わせる靴の要素として赤峰氏が挙げるのが、「タン」カラー。「色の調子が自分にとっていいかどうか、彩度と明度のバランスが今の気分かが、装う上で大切です。ナチュラル感あるグレー系のツイードには、タン色の革靴がいいと思います。スエードでも、明るめの色がいいですね。デザインやスタイルも大事ですが、まずは素材感やそれが生み出す色をどう身につけるかが、重要だと思います。
タンカラースエードのロングウィングチップ[N9503]¥105,600
(オールデン/ラコタハウス 東京店 tel.03-5778-2010)
タンカラースエードのスプリットトウダービー[N9604]¥107,800
(オールデン/ラコタハウス 東京店)
タンカラースムースレザーのパンチドキャップトウオックスフォード[WELHAM]¥84,700
(ロイド フットウェア/ロイド フットウェア 銀座 tel.03-3561-8047)
ダブルソール、C-SHADEカラーのブローグダービー[BOURTON]¥84,700
(トリッカーズ/トリッカーズ 青山店 tel.03-6805-1930)
ヴィブラムタンクソール、タンカラーのエプロンフロントダービー[FG201]¥121,000
(フラッテリ ジャコメッティ/ウィリー tel.03-5458-7200)
リッジウェイソール、タンカラーグレインレザーのセミブローグダービー[SEMI BROGUE DERBY]¥75,900
(ロイド フットウェア/ロイド フットウェア 銀座)
1960年代よりメンズブランドの企画などに関わり、『WAY-OUT』や『chipp』、『GLENOVER』といったブランドを手がける。1990年に企画会社「インコントロ」を設立し、衣食住幅広い分野で活動。現在は『Akamine Royal Line』監修の傍ら、服飾文化研究家として、さまざまなメディアで発信している。
photographs_Hirotaka Hashimoto
〇 LAST issue21 より