彼らの、いま履きたいベーシック。 〜赤峰 幸生(『インコントロ』代表)〜

個性的かつスタイリッシュな装いで知られる各界で活躍する方々に、「あなたにとってのベーシック」、「いま履きたいベーシック」な靴について聞いた。

赤峰 幸生(『インコントロ』代表)
所有する定番靴:JOHN LOBB ボスビークセミブローグ


二十四節気に基づき、旬を感じとる暮らしこそベーシック。

 「生きていく上でのスタンダードがあるかが、ベーシックということだと思います」

 定番やクラシックではなくて、と前置きして、赤峰幸生さんはそんな風に表現した。そして、履物や装いだけでなく、食、住、全てにベーシックというものがあるとも。

 「最近自分で梅干しをつくりました。そうやって自分の手を動かして何かをつくる。例えば包丁もアルミ製などではなくて、鋼のものを砥石で研ぎながら使う。そういうことが食のベーシックだと思います。着るものにもそうしたベーシックがあるように思います」

 こう語る赤峰さんはまた、巷間囁かれるサスティナビリティの考え方は、もともとこうしたベーシック志向に内包されていると言う。

 「例えばウールやコットンなど、土に還らないものは使わない。革も表面をコーティングしたようなものではなく、使ううちに中から質感が滲み出てくるようなものを選ぶ。そうした有機性を軸とするのが僕の考えるベーシックです」

 そして彼が自身のベーシックな靴として挙げたのが、33年前にロンドンのジョン ロブでオーダーしたブラウンのセミブローグ。ビスポークシューズもいくつかつくってきたが、この靴は自分の足にくっついてくれるようで、未だに世話になっていると語る。

 さらに赤峰さんが、着こなしのヒントとしているのが、日本の旧暦における二十四節気。その移り変わりによる植物や作物、旬の食が、気分をつくるという。この日は前出の靴に合わせて、アカミネロイヤルラインのスコティッシュツィードスーツに、オレンジカラーのヴィンテージウエストコートという装い。

 「寒露の候なら、街には寒暖差で咲くキンモクセイが香るので、オレンジ色の服が合うな、と。こうした考え方で暮らすことも、一種のサスティナビリティではないでしょうか」

赤峰 幸生 YUKIO AKAMINE
『WAY-OUT』『グレンオーヴァー』といった数々のブランドの服作りから、イタリアンレストランの監修まで活動は多彩。現在は『Akamine Royal Line』を展開する一方で、服飾文化研究家としても活動している。写真のリラックスしたポーズはケーリー・グラントの写真から着想した。


photographs_Satoko Imazu
text_Yukihiro Sugawara
◯ 雑誌『LAST』 vol.17 特集「BACK TO BASIC “revised”」より抜粋。

タイトルとURLをコピーしました