独創的なデザインと職人技へのこだわりで注目を集める〈フォルメ〉。
浅草の名工と共作した「差し編み」の新作は、実に魅力的な逸品である。
入魂の「差イントレチャートし編み」に魅せられて
〈フォルメ〉の靴が、いま熱い。伊勢丹新宿店をはじめ各地の有力靴店で大きく展開され、「LAST」誌の「シューズ・オブ・ザ・イヤー」特集でも選者たちから絶賛を浴びた。
人気の理由は明快だ。第一に、その「卓越したデザイン性」である。デザイナー小島明洋氏は、往年の欧米靴に範をとりながらも独自の解釈を加え、唯一無二の造形を生み出している。第二に、「手仕事への徹底した執着」である。人の手の温もりが宿る意匠こそ、フォルメをさらに魅力的にしているのだ。「昔の靴には本当に素晴らしい手仕事が施されていました。しかし、そうした技術は失われつつあります。私はそれらを後世に残したいのです」――小島氏はそう語る。

バッグ Panel tote(L)サイズ 40 × 36 × 7cm ¥99,000
Panel tote(M)サイズ34 × 30 × 6cm ¥83,600
タッセルローファー Walter ¥94,600
その象徴のひとつが、今回紹介する「差し編み(イントレチャート)」である。一枚革にスリットを入れ、そこに細い革テープを編み込むことで独自の模様を浮かび上がらせる。斜めに交差する細革が描き出す畝うねは実に美しく、熟練職人の手作業でしか成し得ないものだ。
このたび発表された新作には、その差し編み技法が惜しみなく盛り込まれている。製作を担ったのは浅草の名工房〈カバルロ〉。代表取締役の布瀬川勉氏は、この道50年の大ベテランである。「群馬の高校を出て上京し、浅草の工房に住み込みで働き始めました。それ以来、革ひとすじです。昔は景気がよくて、夜中の12時まで働いても終わらないほど仕事がありました。長らくレディスが中心でしたが、近年はメンズも手がけています。メッシュ(編み)とパンチ(穴開け)には自信があります」と布瀬川氏は胸を張る。


工房に並ぶのは、50年近く前に製造された今や入手困難な工作機械の数々。それらを自在に操り、さらに半世紀にわたり磨かれた手技を駆使することで、平坦な革が瞬く間に表情豊かな芸術品へと変わる。「革は一見同じに思えても、一枚一枚すべて違います。最も難しいのは〝漉き〞の工程でしょうか。長年の勘で補いますが、やってみるまでわからない部分もある。さらに道具は市販されていないので、自分たちで作るしかありません。編み針などは雨傘の骨や自転車のスポークを加工して作るんです。一本の針を作るために、自転車を丸ごと一台バラしたこともありますよ(笑)」


職人のこだわりに、フォルメの新しいデザインセンスが重なり合い、唯一無二のプロダクトが完成した。その出来栄えはデザイナーと職人、双方を大いに満足させるものだった。
「幸い、メンズシューズの世界には、高価格であっても精緻な技巧を理解してくださる目の肥えたお客様がいます。現代は、きちんとしたものを提供すれば必ず評価される時代なのです」と小島氏。


これに布瀬川氏が応じる。
「写真だけでは伝わりません。ぜひ実物を見て、触れていただきたいと思います」
デザイナーと職人の阿吽の呼吸から生まれた逸品。その完成度には、筆者も完全に魅了された。サンプルを目にした瞬間に心を奪われ、バッグと靴の両方を注文してしまったのである。メンズファッションの編集者として35年以上この世界に携わってきたが、こうした衝動に駆られるのは実に稀なことなのだ。


ザイナーを囲むふたりの職人たち。小島氏は2009年にフォルメを立ち上げ、現在では全国に約60の卸先を持つ大ブランドに成長させた。布瀬川氏は職歴50年を誇り、メッシュとパンチにおいては右に出るものがない。
なぜ手間がかかるの?

差し編みに使われる革テープの幅は最小2㎜。地革のスリットに45度の角度で通していくが、革同士の摩擦が強く、人の腕をもってしても、モカ1枚を仕上げるのに1時間はかかるのだ。
●LAST issue25より
photographs_Tatsuya Ozawa text_Kentaro Matsuo
information contact
フォルメ
tel:03-6240-6558
カバルロ
tel:03-5824-9488


