フランスで『オールデン』に出合うということ。
尾崎雄飛
Alden 539 Algonquin Oxford / V-Tip
本誌お馴染みの『SUN/kakke(サンカッケー)』デザイナー、尾崎雄飛氏にも、「長く使い続けている靴」について聞いてみた。尾崎氏から挙がったのは、『オールデン』のVチップ。
「黒のほうが最初で、その後茶を入手しました。どちらも2000年に、パリの『アナトミカ』で購入したものです。モディファイドラスト、フットバランスヒール。コットンライニングは60年代の『オールデン』の仕様を、ピエール(・フルニエ氏、『アナトミカ』オーナー)が強引に復刻したと聞いています」
当時『アナトミカ』では、フルニエ氏のフィッティングに同意できないと、靴を売ってもらえないといわれていた。さらに、大きなサイズを薦められるとも。尾崎氏は〝運よく〟フルニエ氏に接客された。
「彼はブラノック・デバイス(足のサイズの測定器)でアーチの長さを測って、その人のアーチに合う靴を薦めていたんです。僕は日本人にしてはわりとアーチがあるほうなので、そこまで大きくはなく、ハーフサイズ上を薦められました。その通りにしたら、確かにアーチがよく合って、他のどの靴よりも疲れないんです。改めてピエールってすごいな、と思いました」
初めて入手した『オールデン』だったというこのVチップは、尾崎氏に強い印象を与えたが、それと同じくらい、接客したフルニエ氏のスタイルに衝撃を受けたそう。
「ワークコートに、なんとフレアのフレンチ・ワークパンツを合わせてオールデンを履いていて。今ならともかく当時としてはかなり特異で、これまでに受けたファッション的衝撃の中でも1位か2位ですね」
この日のスタイルはそんなフルニエ氏の印象を尾崎氏流にアレンジしたものといえるかもしれない。彼にとって『オールデン』はアメリカというより、むしろフランスのイメージが強いようだ。
YUHI OZAKI
メンズウェアのブランド『SUN/kakke(サンカッケー)』デザイナー。古着からモードまでさまざまな服を遍歴してきた尾崎氏ならではの、素材やディテールに独自のこだわりを盛り込んだ高品質な服は、ファッション感度の高い大人たちに支持されている。
photographs_Hirotaka Hashimoto
○雑誌『LAST』 issue.18 『達人たちの「持続性」ある靴。/ 中込憲太郎』より抜粋。