革靴が持つサステイナビリティを担う重要な存在が、靴のリペアを行う修理店。各地域で独自の活動を行う修理店を訪ね修理への思いや、考えを伺った。
Forma shoe salon
フォルマ・シューサロン
靴修理を核に追求する、美意識の表現。
東京・港区三田のヴィンテージマンション。古い大型マンションらしく1階は小さなショッピングモール調になっていて、その一角に『Forma Shoe Salon(フォルマ・シューサロン)』がある。昨年3月にオープンした、まだ新しい修理店。店舗はガラス張りになっている作業ブースと、顧客の応対をする店舗空間に分かれている。天井が高く、靴修理店とは思えないゆったりとした印象。見上げると独特なデザインの照明が目に留まった。
「イタリアのスティルノボ社のシャンデリアです。1960年代から70年代ぐらいのものでしょうか。どうしてもこの空間に入れたいと思って、入手しました」
そう語るのはショップオーナーの上田正樹氏。ふと気づけば、置かれている椅子なども、近年何かと話題のフレンチミッドセンチュリーの一翼を担うピエール・ガーリッシュの「トノーチェア」だったり、ウェグナーの名作「ヴァレーチェア」だったり、かなりデザインコンシャスな空間になっている。上田氏の美意識をそのまま反映しているようだ。
この店を開く前、上田氏は靴修理で有名な「RESH(リッシュ)」に在籍していた。その前はユニオンワークス、さらにその前には、神戸にて、『シルバノ・マッツァ』などインポーターで知られるヒットマンでスタッフとして働いていた。
「初めは靴づくりに憧れて、神戸で知り合った靴職人・鈴木幸次氏のアトリエに行って試したりもしました。でも、自分はゼロからつくるより、修理に魅力を感じたんです」
さらに、それまではポール・ハーデンやカルペディエムといった靴を好んでいた上田氏だったが、鈴木氏(スピーゴラ)の靴を通じて、ドレスシューズの魅力に開眼した。
「ドレスシューズは、例えば元々の良さを100とするなら、それが使用によって30くらいに劣化したとしても、修理のやり方で再び100に近づけることができます。それを考えるのが面白かった」
そこで先に挙げた修理店で働く中で、一度は自分で店を持ちたいと思いが強くなっていった。折しも友人の鈴木氏も東京に拠点を探していて、『スピーゴラ』を取り扱うならばと、鈴木氏の顧客層も多い現在のエリアへの出店が、次第に固まっていったという。
ショップでは『スピーゴラ』のパターンオーダーシューズ以外に、『クレバレスコ』の『フォルマ・シューサロン』別注のクラッチなどもMTOで展開。またヴィンテージウェアなども上田氏独自のルートから、ユニークなものが少量ながら展開されている。さらに今後はヴィンテージの家具を扱う予定も。SNSの影響もあってそれらを見つけて遠方から来店する顧客も多いが、その一方で付近の顧客も少しずつ増えているという。「先日は近所のご年配の方から頼まれて、お宅まで引き取りに伺いました。決して交通の便がいい立地ではないので、そうした近隣の方たちにとっても使いやすいようにしていきたいですね」
フォルマ・シューサロン
住所:東京都港区三田 5-2-18 三田ハウス
電話:03-6809-5892
営業:12:00〜19:00 日・祝休
HP:http://www.formashoesalon.com
photographs_Satoko Imazu, Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌『LAST』issue.18 「Meet Independent Cobblers 個性あふれる、靴修理店を訪ねて」より抜粋。