革靴が持つサステイナビリティを担う重要な存在が、靴のリペアを行う修理店。各地域で独自の活動を行う修理店を訪ね修理への思いや、考えを伺った。
LABO
ラボ
充実した設備による、自店で仕上げる靴修理を目指して。
「RAPID-E 317EM」そして「LANDIS」。素人には窺い知れない世界だが、靴づくりを生業にする人間ならば、多少身を乗り出すような機械(底付け用のミシン)が並ぶ『LABO(ラボ)』の工房。他にもマッケイ縫いの機械や、圧着機など、この規模で、ここまで設備が充実しているのは珍しいといえる。「ただ、すくい縫いのミシンはないので、あと3年以内に入手したいと思っています。現状リウェルトなどの場合は手作業で縫っています」
こう語るのは『ラボ』代表の山本和孝氏。彼は次のように続ける。
「修理の全ての工程を自分でやりました、といえるようにしたいと思っています」
もともと尼崎の出身の山本氏は、若い頃から職を転々としてきたという。それは自分にしっくりとくる仕事がなかなか見つからなかったからだった。その中でも、靴修理の「リアット」は長く続いていた。さらに途中からは本社の仕事を請け負って、オールソールの底づけをするようにもなった。そこで、この底づけ仕事を引き継ぐ形で独立したのだった・尼崎市内に工房を構え、朝から晩までオールソールだけを行なっていたという。それを2年間続けたというから、かなりストイックといえる。
「もともとひとりで戦える仕事として靴修理を選んだわけです。機械も買い揃えたかったし、このやり方が一番いいかなと」
特に期間を設けず請け負い仕事を続けていたが、このやり方では仕様書ベースで仕事が進むので、修理依頼を受け付けて仕様書を書く際のレベルが低いと、仕事自体も緩いものになってしまう。そこで直接お客様と相対して要望を聞き、それをしっかり修理に反映させるほうが喜んでもらえるのではと思い、店舗で修理を受け付けるやり方に踏み出したのだそう。そして2014年に『ラボ』をオープンした。
山本氏の修理への徹底ぶりは、店頭からも窺える。さまざまな底の仕様を並べたディスプレイは、修理の仕上がりがどういう形になるかお客様がすぐにわかるようにする、サービスの一環という。また修理受付の際の打ち合わせも長く、1時間は常に話し込んでしまうとも。「ニュートラルに、お客様のニーズに応えたいのです」と山本氏。
また、修理の作業では、機械の充実もさることながら、木型を各サイズごとに用意して、それを靴に入れて作業を行なっていることに注目だ。
「木型メーカーの一番オーソドックスなものです。つり込むわけではないので、アッパーの型崩れを元にもどしたり、コルクを入れ直して底面形状を決める時に、左右をそろえたりすることに使ったりする感じです」
これだけファシリティが揃っていることもあって、今もB to Bの仕事は多いという。そろそろ靴づくり、という話もあるのではと水を向けると、「ぶれないほうがいい、靴をつくると、どっちつかずになるかもしれません」とキッパリ。
「靴底メインで、一点突破です」
そう言い切れるだけの準備とスキル、そして自信が感じられる。
ラボ
住所:兵庫県尼崎市南部庫之荘4丁目 9-5
電話:06-6435-8144
営業:11:00〜20:00 木・第二第三水休
HP:https://labo-msr.com
photographs_Satoko Imazu, Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌『LAST』issue.18 「Meet Independent Cobblers 個性あふれる、靴修理店を訪ねて」より抜粋。