彼らの、いま履きたいベーシック。 〜神谷真太郎(トゥモローランド バイヤー)〜

個性的かつスタイリッシュな装いで知られる各界で活躍する方々に、「あなたにとってのベーシック」、「いま履きたいベーシック」な靴について聞いた。

神谷 真太郎(トゥモローランド バイヤー)
所有する定番靴:J.M.WESTON シグニチャーローファー #180


走れるくらいしなやかで100年後その姿をとどめる革靴界のコンバース。

 はじめて手に入れたジェイエムウエストンのローファーはあまりの痛さに耐えられず、帰り道は裸足になったという。当時はかなりタイトに履くことが推奨されていた。痛い思いをしたにもかかわらず、いまも3足のローファーが神谷真太郎さんの“靴”族として玄関に並ぶ。

 「トゥモローランドに入ってしばらく、シーズンごとに高級靴を買いました。靴は20年は履ける。日割り計算すれば高い買い物ではないと考えて。シーズン1足と決めたのは6回払いでローンを組んだから。身ぎれいになって次のオーダーにのぞむ、という寸法です(笑)」


 ジョン ロブ、エドワード・グリーン、オールデン、アルティオリ……増える靴族のなかでも格別な1足がくだんのウエストンだった。


 「サイズさえ誤らなければ、僕のなかでは楽チン靴の筆頭。走れるくらいしなやかです。そして、100年変わらない姿は革靴界のコンバースといえると思う。無味無臭ななかにエスプリを感じさせるのもいい。モカの立ち具合も寸止めのカジュアル感があって、たまらないものがある。それはトゥモローランドの世界観にも僕の趣味嗜好にもフィットするものでした」


 フレンチトラッドな香りが立ちのぼってくるスタイルの足元にもってきたのはコンビの1足だ。パリ出張で出会ったショールームの女の子が履いていて一目惚れした。プリントTシャツにヴィンテージの501。肩の力が抜けた着こなしにぴたりと寄り添っていたとか。古着屋で掘り当てたという彼女のローファーの風合いを再現すべく、履きおろしから黒の靴墨を塗り込んだ。禿げた箇所も気にせず履き続けた。


 「ヤレ感を目指して育ててきましたが、これはさすがにやり過ぎの感がある(笑)」

神谷 真太郎 SHINTARO KAMIYA
大学卒業後、トゥモローランド入社。名古屋ラシック店、丸の内店での販売を経て08年、アシスタントバイヤーに。翌09年、バイヤーに昇格。ドレスクロージングの第一人者だが、カジュアルセクションも兼務しており、トレンドを俯瞰したバイイングには定評がある。


photographs_Yoshihiro Tsuruoka
text_Kei Takegawa
◯ 雑誌『LAST』 vol.17 特集「BACK TO BASIC “revised”」より抜粋。

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