『スコッチグレイン』靴磨き職人が磨きたくなる革“熟成革”

右より、『GAKU PLUS』佐藤我久氏、ヒロカワ製靴の廣川雅一社長、『山陽』の川見斉社長。「熟成革」のサンプルとともに。

三者の協業が生み出す、新しい靴の魅力。

 昨今大きな盛り上がりを見せるシューシャイン(靴磨き)。質実剛健で本格的な靴づくりで知られる『スコッチグレイン』がそのムーヴメントとコラボレーションしたらどうなるのか。それは「靴磨き職人が磨きたくなる革」を使った靴と、その革に最適なワックスの開発という『山陽×GAKU』プロジェクトに結実した。

 今回の立役者のひとりは、兵庫・姫路のタンナー『山陽』。創業100年を超える歴史を持つタンナーであり、『スコッチグレイン』の革も数十年来手掛けている。この山陽との協議から生まれたのが〝熟成〟の発想だった。

 そのプロセスは、まず鞣し後に甲革の最初の選別を行い、さらに表面の染色後に再度この『山陽×GAKU』向けにハイグレードをより分ける徹底ぶり。その後、革の表面にスプレーにて、自然由来のワックスをまんべんなく吹き付け、10度に保たれた低温冷蔵庫に3か月間静かに寝かし続けることで、〝熟成革〟として、ワックスが表面や繊維に浸透し、革の張りやコシ、感触などの質感に違いが出ると言う。

 もうひとりの立役者は、名古屋を拠点にシューシャインを展開する『GAKU PLUS』の佐藤我久氏。この佐藤氏はシューシャイン界のエンターテイナーとも呼ぶべき人物で、靴磨き日本選手権では大会最年少で審査委員特別賞を受賞している。今回は靴磨きに強い情熱を持つ佐藤氏が監修を行い、「簡単に艶が出せる」、「早く艶が出て楽しくなった」といわれるよう、あくまでも、『山陽×GAKU』の靴に適した靴クリームを開発している。

 さらなるプレイヤーが、佐藤氏の監修のもと実際にこのワックスを製造した『コロンブス』。こちらも創業90年以上を数え、現在はグローバルに活躍している老舗シューケア用品メーカーである。千葉県・松戸にあるファクトリーは、清潔できっちりとした物づくりが随所に窺えて、緻密な分量や繊細な色合いで世界的にも評価が高いブロダクトが生み出されるのも頷ける。

 これら3者の協力があってこそ、『スコッチグレイン』が生み出す靴がこれまで以上に情熱や愛情の対象となり、ユーザーのもとでそれぞれが個性ある靴に育ってゆく。成長する『スコッチグレイン』、それがこの『山陽×GAKU』である。

 ヒロカワ製靴の廣川雅一社長が追求する、「生活の道具」そして「サラリーマンに愛される靴」。そこに 〝熟成革〟による「靴磨きが楽しくなる靴」という新たなカテゴリーが加わった。

タナリーの玄葉でワーカーの説明を聞く佐藤氏と廣川氏。手前は一度クロム鞣しを経た「ウェットブルー」状態の革で、この時点で一度選別が行われる。

SCOTCHGRAIN
SANYO × GAKU model

『スコッチグレイン』を手がけるヒロカワ製靴と、姫路のタンナー『山陽』、そして名古屋の靴磨き『GAKU PLUS』がコラボレーションして実現した靴とワックス。約3ヶ月低温で寝かした「熟成革」は、油分を含んだコシのある感触が特徴。スペシャルワックスでのケアを想定して、ファクトリーではあえて最小限度の仕上げしかしていない。ワックスのパッケージに配されているのは、『GAKU PLUS』代表の佐藤我久氏のイラスト。
靴▷¥35,000 ワックス▷¥1,500

Information Contact
スコッチグレイン銀座本店
tel:03-3543-4192


photographs_Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○ 雑誌『LAST』issue.19 「靴磨き職人が磨きたくなる革”熟成革”。」より抜粋。

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