「高価な靴を長持ちさせる」ためのシューケアを考える。Part.1(サフィール)

昨今盛り上がりを見せるシューシャイン。それらは靴を美しく見せる技術といえるが、それでは、靴を保ち、長く使えるようにするために出来ること、そのためのシューケアとはどういうものだろうか。そこでシューケア用品を手がけている担い手に、お話を伺った。

ルボウのSAPHIR(サフィール)製品を使ってのケア。1~6のステップ

写真正午位置から時計回りに。
スレイプニルハイシャイングローブ。¥500。
同シダーシューツリースタンダード。¥3,400。
サフィールノワールコンディショニングクリーナー。¥2,500。
ルボウハイシャインポリッシュクロスエクストラ。¥1,000。
サフィールノワールビーズワックスポリッュ50ml。¥1,200。
サフィールノワールクレム 1925。¥2,200。
サフィールノワールアプライブラシ。¥1,300。
サフィールノワールホースヘアブラシ12cm。¥3,500。
サフィールノワールブリストルポリッシャーブラシ。¥3,000。
ルボウフィニッシャーブラシ。¥1,500。


カーフやキップ等、スムースレザーのアッパーを持つ革靴の「ベーシックケア」の方法 。

靴のコンディションを保つには以下のABCの3 ステップを踏みたい。油性ワックスを敢えて靴全体に、薄く塗るのがポイントだ。A:汚れ落とし。靴紐を外してシューツリーをセットし、馬毛ブラシで表面の汚れやホコリを落とした上で、クリーナーで革の内部の汚れを取る。B:クリームで潤いと栄養を与える。アプライブラシで油性クリームを塗り、豚毛ブラシで靴全体に成分を馴染ませる。C:油性ワックスでコート。手に水気が付かない程度の水を含ませた布で、少量の油性ワックスを靴全体に広げた上で、乾拭き。ワックスを入れ過ぎた箇所は豚毛ブラシを軽くかけ輝きを散らそう。次いで新しい面にした布に水を一滴付けた上で水拭きし、革の表面を平滑にする。山羊毛系のブラシに手が湿らない程度水を付けブラッシングし水拭きの拭きスジを消した後に、ストッキングと同素材の布に水を一滴たらし手早く磨き上げると、摩擦熱で曇りが取れ、潤いの豊かな光沢が得られる。

A:汚れ落とし

サラサラな液体のサフィールノワールのコンディショニングクリーナー。ご覧のように汚れは確実に落とすが、靴の内部に定着した有効成分は残し乾燥を防ぐ。

B:クリームで潤いと栄養を与える

サフィールノワールのクレム1925の分量は片足米粒2・3 粒程度で十分。特に履きジワとコバ周り、それにステッチの周辺は念入りに。豚毛ブラシでのブラッシングは力を入れてOK。摩擦熱で成分が早く浸透できるためだ。

C: 油性ワックスでコート

油性ワックスの分量は片足で薄く2・3タッチ程度。乾拭きは革を軽くマッサージする感覚で行う。水拭きや山羊毛系ブラシでのブラッシングはかとからつま先へと優しく、しかし素早く行いたい。


コバやソールのケア方法。

セサミシードオイルやアボカドオイルを配合した革底用のサフィールノワールソールガード。伸びが良いので少量塗れば効果が出る。¥2,500。エッジ&ヒールレストアラーの成分はサフィールの業務用コバインクと同じ水性顔料ベースのワックス。浸透力も高い。¥1,200。


季節の終わりで革靴をしまう前などに行いたいケア方法。

ブーツやスリッポンなど、季節により履く・履かないがはっきり分かれてしまう紳士靴は案外多い。これらを使わない時季、長期にしまい込む前に用いたいのが、クリーナーの中でも「汚れは落とすが革の潤いはしっかり保持する」系統の商品。保湿を通じてアッパーの革を柔らかくし、履かない期間の劣化やひび割れを防ぐ効果が高いからだ。ただし次のシーズンの初めに、前述した基本のお手入れをやり直すのを忘れないこと。また、シーズンオフの際に保管しておく場所も、その後のコンディションに大きな差が出るのでくれぐれも注意したい。最も怖いのがカビの発生だが、適度に風通しの良い暗い環境とすることだけでも防止の効果は十分得られるはずだ。

このようなケアには、ビーズワックスやミンクオイルを配合したサフィールノワールのレザーバームローションが正に最適。使う量は片足に小豆一粒程度で十分。これを布に馴染ませた後に靴全体に行き渡らす。¥2,000


薄い色のスムースレザーのアッパーを持つ革靴のケア方法。

春から夏にはつい惹かれるものの、シミが目立ちやすいのが難点の薄色の靴。アッパーのシミの原因は、乾燥し過ぎた状態で汚れや強い成分のクリーム(油分)がムラになって入り込むためで、その防御には事前の適度な保湿が有効となる。まず、デリケートクリームを手に適量取りアッパーに塗る。これが次に入れるクリームを均質に染み込ませる、化粧品のブースターと似た役割を果たすのだ。次にソフトな馬毛ブラシで軽くブラッシングし成分を革全体に馴染ませる。その後、繊細な革専用の乳化性クリームで柔軟性を与え、自然な光沢を加える。最後に無色の油性ワックスを軽く全体に一層、ベールに包む感覚で用いれば、この種の靴のシミへのリスクは軽減する。

サフィールノワールのスペシャルナッパデリケートクリームは、溶剤や蝋分を含まないので色抜けも防げる。¥2,200。ブラシはソフトな馬毛のものを用いるのがポイント。硬い豚毛では摩擦熱で色を焦がすリスクが高くなる。


スエードやヌバックなど起毛系のアッパーを持つ革靴のケア方法。

一見繊細だが対候性は高いスエードやヌバックは、実はケアも簡単。まずシューキーパーを靴に入れ、豚毛ブラシでホコリや汚れをかき出すと共に毛並みを整える。スナップを効かせたブラッシングが肝心なので、 この場合のブラシはハンドル付きがお勧め。その後でスエード専用のスプレーを吹き付け、革に潤いと油分を補給し、柔軟性を与えると共に撥水力を高める。その際スプレーは靴から30㎝程度離して用いること。 成分を靴全体に均等に行き渡らせるためと、中の溶剤をこの距離で揮発させ革の表面に付着させないためだ。最後に豚毛ブラシで毛並みを整える。雨天時に履くなら撥水スプレーを更に一吹き。

手前がアーモンドオイルを配合したサフィールノワールのスペシャルスエード&ヌバックスプレー。¥2,500。ブリストルハンドルブラシの毛にはワイヤーを用いていないのがこのブランドらしい。¥2,200。奥のウォータープルーフスプレーはスエード以外にも当然使える。¥2,500。


革を守るという目的での、「鏡面磨き」ワックスの使い方。

近年人気の油性ワックスを用いた鏡面磨き仕上げ。サフィールノワールのミラーグロスを筆頭に、「革を輝かせる」役割に特化した硬めの油性ワックスも好評だ。しかしこれ、使い方を工夫すれば雨水の侵入や傷から「革を守る」効果も期待できる。ポイントは用いる分量のバランス。通常の鏡面磨き仕上げでは、一般的な油性ワックスで革の毛穴を埋めベースの層を作った後、この種のワックスをメインに用いて薄く数層重ね光沢を出してゆく。しかし革を守る効果を重視する場合は、前述の基本的なお手入れが一通り済んだ後、要所にこれを1〜2層コーティングするイメージで仕上げる。なお、手に触ってもすぐ乾く程度の水を布に付けてから塗るのを忘れずに。

ビギナーでも鏡面磨きに失敗し難いと評判の油性ワックス・サフィールノワールのミラーグロス。革を守る目的を重視する場合は、磨きの主役としてではなく最後の仕上げで要所にのみ軽く用いたい。¥2,200。

EXTRA
コードヴァンのケア方法。

コードヴァンのお手入れには、通常のものに代わり専用のクリームを用いるのがお勧め。サフィールノワールのコードバンクリーム(写真中央)にはニートフットオイル(牛脚油)を配合することで、この革特有の毛羽立ちを抑える効果を高めている。これを用いた後、油性ワックスでコーティングを施すと共に更なる光沢を出すのは一般的な牛革と同じだ。¥2,200。

お話を伺った方

田中忍さん
ルボウ 営業部兼メディア担当マネージャー

information contact
株式会社ルボウ お客様相談室
tel:0120-11-3638


photographs_Takao Ohta
text_Takahiro Iino
○雑誌「LAST」issue.18 「Shoe Care To Keep Shoes in Good Condition」より抜粋。

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