日本を代表する靴職人・土屋 聡。海外でも注目された「デコ」な靴とは。

ショップスペースにディスプレイされていた、独特なトウシェイプを持つ「DECO」シリーズのオーダーサンプル。トウ上部の丸みを抑えた「EGG」と2種のトウシェイプが展開されているが、現在次なるシルエットを模索中とのこと。

World Championship in Shoemaking 2019で注目されたバルキーなトウを持つ、ウェルメイドなフルブローグ

ロンドンで行われた「World Championship in Shoemaking 2019(靴づくり世界選手権)」。スウェーデンのブログメディア「Shoegazing」が主催するハンドメイドシューズの競技会、そこでひときわ来場者の目をひいた靴があった。人々は口々に「ピエロの靴」と呼んだと、「Shoegazing」のジェスパー・インゲヴァルドソン氏は書いている。さらに彼は次のように続けた。「アッパーとボトムメイキングは非常に高いレベル。注目すべきは、このような大きなトウの靴をつくるためには、さらに複雑な工程が必要であるということだ」。かくしてこの靴は7位という高位に輝いた。

その靴をつくった職人の名前は「So Tsuchiya(土屋 聡)」。英欧の人々を驚かせながらも、評価された靴が生まれた場所は、東京西部、国立の奥まったところにあった。建物1階の店舗部分はアールヌーボーというか、植物そのものを感じさせる丸みあるドアが印象的。聞けば、ジブリ美術館を手がけたのと同じ職人によるものという。それは周囲に残る武蔵野の緑の感触とともに、来客を異世界に誘うようだった。店内奥にディスプレイされた、独特な丸いトウを持つ土屋氏の靴たちが生き生きとして見える。「ここは建築士とともに、自分と妻とでかなりの部分をつくりました。もともとこのエリアで育ったのですが、店舗や工房、靴教室、そして子どもを育てる自宅とが分かれてしまうより一緒のほうがいいと思ったので、思い切ってここに拠点を決めました」階下の工房スペースから上がってきた土屋氏はこのように説明した。そして、切りのいいところまでやらせてください、と取材班を迎えるとすぐに作業に戻った。工房部分は店舗の3倍はゆうにある広いスペース。もっともその多くは土屋氏が靴づくりと並行して営んでいる靴づくり教室向けであって、彼はといえば部屋の片隅で、身体を屈めてすくい縫いを行っていた。

ショップのエントランス。オーガニックな印象のドアは、ジブリ美術館なども手がけた職人によるものという。
ショップ内部の多くの部分は、土屋氏がDIYで仕上げたという。その完成度に驚かされる。
サンプルのディスプレイケース裏には、オーダー時に履いてもらうゲージサンプルや、木型が収められていた。丸いトウが並ぶ様子はなかなか圧巻。
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