革の特性を知ることで靴選びがもっと楽しくなる。

革靴のアッパー(上部)で使われる一般的な革について、革を扱うエキスパートに話を伺った。

カーフ、コードヴァン、スエード、ベロア、クロムエクセルを解説。

お話を伺った人
早川 喬(はやかわ たかし)ニッピ・フジタ営業部

長年にわたって日本の皮革生産を担ってきたニッピと、皮革関連の老舗商社の藤田商店とが共同で設立した『ニッピ・フジタ』営業担当。今回紹介した革は全て同社取り扱いのもの。

【Calf [Kip]】カーフ(含むキップ)
ドレスシューズ向きの革としてまず挙がるのがボックスカーフです。生後6ヶ月から9ヶ月の牛の原皮を使い、クロム鞣しでつくられた革を指します。厚さは1.5ミリぐらいが靴には適していると思います。日本の革分類だと本キップもそれに含まれます。ちなみに本キップは半裁(日本では通常牛革は背中で左右半分に切られたものが流通している)で100デシ(1デシは10センチ四方)程度の大きさのものになります。クロム鞣しとは、塩基性クロム塩の鞣し剤を大型のドラムで急速にしみこませる方法で、クロムの特性で屈曲しても復元しようとする形状記憶のような性質が生まれます。ボックスカーフで著名なタンナーとしては、フランスの『デュプイ』『アノネイ』、ドイツの『ワインハイマー』などが挙げられます。

フランス『デュプイ』の「サドルカーフ」という製品名のボックスカーフ。ちょっとマットな感じの仕上がり。肌理が細かく詰まった感じが良質なボックスカーフの証
同じくフランス『アノネイ』の「ボカルー」。こちらも肌理が詰まった感じがよくわかる
ボックスカーフは急速に鞣すために断面が青白くなる。革の強度を保つ真皮層が残っていることを示している。

【Cordovan】コードヴァン
ドレスシューズに使われる革としてボックスカーフ以外で挙げるとするとコードヴァンでしょうか。コードヴァンのタンナーとしてはアメリカのホーウィン社が有名ですが、日本にはランドセル用としてコードヴァンのマーケットがあり、タンナーもいくつかあります。馬の尻部分の、組織が緊密になったところ(シェル層、コードヴァン層)を銀面ではなく床面から削って出し、グレージング(ガラス等で摩擦する)して表面を均した革で、いわゆるギン付き革では表現できない透明感あるツヤが特徴です。ただ毛穴の目をグレージングで潰しているので、水を含むと組織がほぐされて開き、気泡のような凹凸ができてしまうのが難点です。その点、日本のコードヴァンはしっかりとグレージングしていて他と比べ耐久性があります。

新喜皮革のナチュラルカラーのコードヴァン。コードヴァン製造のノウハウを活かしてグレージングがしっかり施されて、水滴の跡などが比較的出にくいと早川氏。
アメリカ・ホーウィン社のシェル・コードヴァン。日本のコードヴァンに比べてホーウィン社のそれはオイルを多く含み馴染みやすい。

【Suede】スエード
皮の床面(裏面)を起毛させたものがスエードで、牛のほかに豚や羊などの皮を使ったものがあります。いまスエードとして多く流通しているのは英国チャールズ・F・ステッド社の「スーパーバック」で、銀面の部分をラミネート加工しています。本来スエードとは銀面が裏側になっている、真皮層があるものを指すので、ちょっと異なる革ともいえますが、毛足がコントロールされていることもあって人気です。ギン(銀面)付きのスエードとしてお薦めは、アフリカの野生動物クードゥーのスエード。クードゥーの革はワイルドな風合いの銀面側を使うこともありますが、スエードは非常にソフトでなめらかです。厚みがあるのが難しいところですが、トリッカーズなどではよく使われています。

英国の老舗タンナー、チャールズ・F・ステッド社の「スーパーバック」。細かな毛足と均質な質感で、人気を博している。裏側はラミネート加工が施されている。
アフリカ原産の動物クードゥーのスエード。牛と鹿のスエードを組み合わせたような、ソフトでしっかりとした毛足が魅力。銀面側を使うこともできる。

【Velour】ベロア
革の銀面と真皮層を取ったものを起毛させたのがベロアです。ベロアは毛足の長さをオーダーすることが可能です。ベロアの良質なものはスニーカーの生産拠点でもある東南アジアに多く、毛足の長さがばらつきなくコントロールされています。毛足がいかに均一ということがベロアの質を見分けるポイントです。

ニーカーなどによく使われるベロアは、ベトナムなどに良質なものが多いという。銀面や真皮層を取った後の素材なので、裏側も同じようなテクスチャーになっている。

【Chromexel】クロムエクセル
ワークブーツなどカジュアルなスタイルの靴に使う革として、オイルを含ませて仕上げた革が人気ですが、その一例として挙げられるのが、アメリカ・ホーウィン社の「クロムエクセル」です。ステア(生後24ヶ月未満の去勢雄牛皮)をクロムと植物タンニンで混合鞣しし、銀面を少し擦った後に、オイルや顔料を含ませて仕上げた革です。アメリカ的な価値基準で表面は均質に仕上げてあるのですが、ちょっと表情があるのが魅力でもあります。

同社の古いレシピから復刻したというアメリカ・シカゴのタンナー、ホーウィン社の「クロムエクセル」。表面を押すだけでわかる豊かなオイル感が特徴。傷などがついてもブラッシングで消えるタフな革だ。

photographs_Takao Ohta
〇 LAST issue17より

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