キャップトウのケア&磨きガイド

エッセンシャルな紐靴であるキャップトウ。ここではそのケアと、キャップを光らせるポリッシュ(磨き)まで『Freestyle』のなかじまなかじ氏がガイドする。

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紐靴のケアはまず紐を外すところから。なかじま氏もクイックサービスなどではない場合は外すことが多いという。ここに汚れやホコリがたまるからだ。

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馬毛のブラシで全体をブラッシングして汚れやホコリを落とす。写真のようにレース部のタン(ベロ)まわりなどにもブラシを入れて丁寧に。

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布にクリーナーをつけて汚れを落とす。布はなかじま氏の場合、ホテル用のシーツを業者から仕入れている。古いシーツを使うのもいい。

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汚れ落しはこのぐらい布が濡れるぐらいに。クリーナーは通常市販されているもので問題ない。強力なものは避けたほうが無難だ。

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クリーナーは部分的に一気に革に染み込まないように、最初はヒール部から様子をみて、布につけつつ全体の汚れやワックスなどを取っていく。

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革表面に残っていたワックスなどがこのようにとれる。革の表面が「すっぴん」状態になるよう、様子を見ながら作業を行う。

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乳化性のシュークリームを革に塗っていく。今回は『M.モゥブレイ』の「クリームナチュラーレ」を使ったが乳化性クリームであれば問題ない。

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アッパー表面は指を使ってクリームを「入れる」感じ。ちなみに今回のような古い靴の場合は、この前にデリケートクリームを使ってもいいという。

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こうしたコバの部分や。アッパーのギンピング(ギザギザのエッジ)には、ペネトレイトブラシを使うと均一にクリームが入りやすい。

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全体的にクリームがいき渡った状態で、豚毛ブラシを使って革表面に乗っているクリームを伸ばしていく。シワ部分は特に丁寧に。

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クリーナーのところでも使った布の、未使用の部分で革表面を乾拭きしていく。シワなどクリームが潜りこんでいそうなところは気をつけて。

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ここまでで乳化性クリームのケアとしては終了。磨きというより革のコンディションを保つ作業といえるだろう。月1回ぐらいはこうしたケアをしたい。

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この後はワックスを使った磨きの作業。今回は『サフィール』の「ノワール」を使った。なかじま氏は指を使ってこの程度とりながら行う。

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カウンター(芯)が入っているところに指で円を描くようにワックスを広げ、いろいろな方向から塗り重ねる。毛穴ひとつひとつを埋めていく感じ。

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表面が乾き、ワックスがダマにならないぐらいに塗っていく。キャップ部は2〜3回ワックスをとる感じで。15分程度かけワックスの層をつくる感覚。

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キャップのカウンターの柔らかさを確認して、状態に応じてワックス層の厚さを変える。またキャップのエッジにかけては段階的にグラデーションに。

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指での作業の後は、ネルの布を使ってワックスを入れていく。まずはハンドラップを使って布に水を適量つける。黒ネルはなかじま氏の特注。

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ネルを濡らした後布の上で水とまざるような感じで、ワックスをとる。ワックスはあまり一気にとりすぎないように、少しずつ適量に。

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ネルにワックスをとったら、ワックス層の凹凸をなくすイメージで塗っていく。なかじま氏の場合、ソール側のほうから強く光るようにするという。

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ネルを濡らして、ワックスをとる。時にはその逆のやり方も。ちなみになかじま氏はワックスを硬めの状態とやわらかめの状態、2種用意するという。

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水で濡らしただけのネルで磨く作業も随時交えて。水は油をさらって伸ばす効果と、水で冷やしてロウ分を固める効果もある。

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好みの艶感になってきたら、豚毛ブラシを使ってワックスの境目をぼかしたり、シワ付近のワックスを散らして艶のグラデーションを整える。

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磨きの仕上げの工程へ。山羊毛のブラシに水分をつけて磨いていく。山羊毛ブラシは日々履く前に使ったりもできる便利なアイテム。

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このようにブラシの水気を調整する。水をつけすぎると曇ってしまう。革に水が染み込むのは、ワックスの層が少ないか、水分が多いかのいずれか。

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水分を適量含ませた山羊毛ブラシを、まず全体的にさっとかける。輝きが出てくるのがよくわかる。その後キャップ部や踵部も。

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最後にまたネルの布と水を使って仕上げ。この時やわらかい状態の、蜜蝋系のワックスを微量使うこともあるという。

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ネルの布に微量とったワックスをなじませていくように磨く。豚毛ブラシを使った際にできる微細な傷を消し、表面をより滑らかにする効果がある。

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磨きを終えた靴。片足30〜40分程度。もちろん普段のなかじま氏はもっと早いが、一般でやるのにはこのぐらいが目安かもしれない。

ITEMS 今回使用した道具。

写真下は今回使った道具類。ブラシ3種はやはり揃えると便利だ。写真左上はワックスで、蜜蝋系の『サフィール』の「ノワール」のほかに、なかじま氏は油性の『キィウィ』の「パレードグロス」も挙げた。写真右上は乳化性クリーム、『サフィール』は油分が強いので、使うのにやや注意が必要とのこと。

新宿・歌舞伎町をホームとするなかじまなかじ氏とは。

今回キャップトウのケア&磨きを実演していただいた『Freestyle(フリースタイル)』のなかじまなかじ氏。今年の靴磨き日本選手権で第2位に輝いたシューシャイナーだ。現在はシューメイカー『ヨウヘイ・フクダ』の仕上げ&磨きも担っているが、彼は新宿歌舞伎町を自身の拠点と標榜する。夜の仕事に関わった後、靴磨きの道に進んだなかじま氏。その経歴もあり、彼は「夜の世界の足元を変えたい」と、キャバクラのボーイやホストの靴を預かって磨いている。右の写真はある日のデリバリーの様子。美しい女性たちの脇に控える黒服たちの足元には、いつも磨かれた靴がある。そうした風景に向けて、彼の挑戦は今日も続く。


photographs_Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌「LAST」issue.19 「Cap Toeをケア&ポリッシュ。」より抜粋。

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