LASTが注目する個性的かつスタイリッシュな装いで知られる各界で活躍する方々に、「あなたにとってのベーシック」、「いま履きたいベーシック」な靴に聞く企画。
LAST本誌でもおなじみの尾崎雄飛さんに「ベーシックな靴」について訊ねてみた。挙がってきたのは、彼自身初めてオーダーしたジョンロブのビスポークシューズだった。
ビスポークで選んだのは自分の原点だったネイビーカラー。最高を追求することはまた、自分の原点に向き合うことでもあった。
尾崎雄飛さんに「ベーシックな靴」を訊ねたところ挙がってきたのが、つい先日(取材当時)仕上がったばかりの、彼自身初めてのビスポークシューズだった。
「ロンドンに住んでいた19歳の時、何度もジョンロブのお店に行きました。店構えが素晴らしくて、ビスポーク靴としても最高峰。単純に憧れましたね。そして、いつかここで靴をつくろうという思いが、執念のようになっていたのです」彼の革靴への志向の、原初的なものにジョンロブが関わっていたのだった。さらに、アッパー
にネイビーブルーのレザーを選んだことも、ベーシックということにつながっている。
「もともと紺色は大好きな色でした。デニムの、インディゴがフェードしていく(色が薄くなっていく)のが好きでした。革製品でもネイビーの財布を気に入って使っていました。でも、それらのことを長らく忘れていたのです。今回、ジョンロブで靴をつくろうと決めて、何かビスポークらしいことしよう、それは何だろうと、オーダーの時までずっと考えていました。そして革見本の中から、“ ダークブルー” という革を見つけたんです。紺色をブルーと表現する文化がかっこいいなと思った時、かつて自分がこの色を好きだったことを思い出したのです」
だからこそ、仕上がった靴に合わせるのはデニム。まだ色がしっかり残っている50年代の501XXに、トップスには同じく50年代のセカンド。さらに自身がデザインする『SUN/kakke』から、オーバーサイズで「おじさんから借りた」ような雰囲気になるツイードジャケットを選んだ。
「結局、自分のベーシックに戻ったんですね」と尾崎さん。最高を追求することはまた、自分の原点に向き合うことでもあったのだ。
Yuhi Ozaki(尾崎雄飛) プロフィール
『SUN/kakke(サンカッケー)』デザイナー。今回尾崎さんがロンドンのジョンロブでオーダーしたのは、同店を代表するプレーンダービー「Hi-Lo」。アッパーはダークブルー(ネイビー)、シューレースもネイビーが選ばれている。
photographs_Tomonori Nishigori
〇 LAST issue17 より