シューメイカーに聞いた、紐靴の見方。プレーントウオックスフォード by「ボレロ」

紐靴(Lace-Ups)のスタイルは、どのような感覚で導かれているのか。

シューメイカーに、それぞれの紐靴(または紐靴に準じるスタイル)に関して、その見どころや、留意している点などを解説していただき、紳士靴のあり方や美しさを再考していく。

シンプルなスタイルに表れる、独自の感性。ビスポーク靴工房『ボレロ』による紐靴。

名古屋のビスポーク靴工房『ボレロ』を営む渡邊朋行氏。近年海外でもその名が知られるようになっている同店が初期から展開しているモデルがプレーントウのオックスフォード。

「当初はスエードを使ったスタイルとして打ち出していたんですが、最近は黒のカーフでも違和感なく感じています」と渡邊氏。シンプルゆえにヴァンプラインが重要だが、渡邊氏によればそれは「靴の前後を均等に振り分ける」感覚だという。幅広でアーチ(土踏まず)が短く、結果、バランス的に踵が小さくなりがちな日本人の足において、いかに靴前部のボリュームが大きく見えないようにするか重要だとも。

また、つくりにおいても独自の視点が。「最近ウェルトは薄くなっています。元来それはアッパーとソールのつなぎなわけで、ソールやアッパーにはしっかり縫われていたほうがいいですが、例えばドアのヒンジのように、それ自体は柔軟で薄いほうが良いのではと、考えているのです」。

渡邊氏の好みの素材ということもあり、もともとはスエードを使った、独特なバランスの靴として始まったという。上の黒のカーフのサンプルは新たにつくったもの。チゼルトウがプレーントオックスフォードのスタイルと相性が良い。ヴァンプラインによって靴の前後を「振り分ける」ように、そしてあまりスマートなロングノーズに見えないように、レース部のボリューム感なども含めバランスをとっている。
プレーンオックスフォードの踵はシームレスヒール。ミニマルな印象だ。「バランス的に踵が小さい場合、そのままだとウエスト部よりも幅が狭くなってしまいがちです。そこでフィッティングに影響のない範囲で踵の底面部を意図的に出しています」と渡邊氏。ピッチドヒールもウエスト幅とのバランスで角度をつけすぎないようにしている。
「横から見た時に、靴として薄さの印象が重要です」と渡邊氏。そのために、アッパーが底面側に丸みを持ってウェルトを介してインソールと縫い合わされるのではなく、アッパー底面のエッジぎりぎりにウェルトを縫い合わせることにより、アッパー底面が丸まらずに、ウェルト(ソール)に乗ったような仕上がりを追求している。ちなみにインソールは実際には以前よりも厚くなっている。
渡邊朋行
ビスポークシューメイカー『ボレロ』代表。東京や大阪、海外でも受注会を行っている。ビスポークは¥300,000~(シューツリー込)+初回木型代 ¥50,000、仮縫い1回、納期は要相談。

「Bolero(ボレロ)」 Shop Data
住所:愛知県名古屋市中区栄5-8-16 栄5丁目ビル2F
電話:052-251-6722
HP:http://bolero-shoemaker.jp

photographs_Satoko Imazu
〇 LAST issue19 より