使い古され、靴棚に眠っている靴は誰しも思い当たるものがあるはず。「今の自分にあわせた再生・最適化(=HACK)」の実践について、リペア&カスタムのプロたちを取材した。
ハイブリッド感と履きやすさをとことん追求する。『リクチュール』による「靴の再生」。
スニーカーを中心としたカスタマイズで、国内外にその存在が知られる『リクチュール』。今回は、彼らのやり方で革靴を「HACK」してもらおうと相談。持ち込んだのは『レッドウィング』のペコスブーツ。
廣瀬瞬さんは、こちらの「ちょっと履きにくい」という言葉に、ジップアップ化を提案。さらにソールを外してつけるスニーカーソールも、着色してエイジング感を出すプランを挙げた。
「ちょっとやってみましょうか」と、その場でソールを外し、軽く着色。いろいろ検討を重ねたが最終的には廣瀬さんに一任することになった。
そして仕上がったのは、ブーツの古びた感じはあえてそのままにしながら、『リクチュール』別注色のヴィブラムソールに換装。ジッパーはアウトサイドに斜めに配して、着脱しやすくするとともに、途中まで開いた状態で履くこともできる。異素材のマッシュアップ感とコーディネイト感が絶妙にバランスしていると思うが、いかがだろうか。
【GUIDANCE(依頼と提案)】
【PROCESS(工程)】
1_トウガードがあるスニーカーソールをつけるので、元の靴についているトウ部のカウンターは取り外す。トウ部が自然な仕上がりに。2_ソールを接着するために、アッパーの底面部にいわゆる「のりしろ」になるパーツを縫い付ける作業。3_インソール部をつけて、カウンターを新たに入れたトウ部を中心に、アッパーのつり込み(くせづけ)を行い接着。このあたりは手作業で行われる。
- 4
- 5
4_インソールは納品時に試し履きをした上で、フィッティングを調整して入れる。写真のようにジッパーを途中まで開いた状態でも 履ける仕様。5_インソールは革の裏側にEVAを貼ったものを使う。
- 6
- 7
6_フィッティングにあわせて、厚みを調整。7_「やっぱりあったほうがいいかな」と、革紐をジッパーのヘッドにつけた廣瀬氏。目立ち過ぎないように長さを調整。
【FINISH(仕上がり)】
退色してムラ感あるアッパーと、同系の色合いを含みながらも、異素材のスニーカーソールとのコンビネーションが絶妙。スポーツでも、ワークでも、ミリタリーでもない独特な存在感に仕上がった。修理の内容としては、ファスナー取り付け ¥16,500、グッドイヤー→つり込み ¥19,800、スニーカーソール ¥15,000。価格はすべて税込み。
1_『リクチュール』がヴィブラム社に、パントーンの色見本から選んで組み合わせた色別注のソールの底面。2_ジッパーの合わせの部分もしっかりつくられていて、外したときの見え方も自然な感じに。3_シャフト部分のサイドステッチをジッパーが横断するようなデザインは、どこかDIY的(HACK的?)でありながらも、つくりとしての完成度はかなり高い。
今回の「HACK」に賛同してご対応いただいた『リクチュール』の廣瀬瞬さん。世界的にも盛り上がりを見せるスニーカーのカスタマイズにおいて、日本の第一人者として知られている。近年は自身の靴づくりもスタート。
shop information
『RECOUTURE(リクチュール)』
住所:東京都渋谷区渋谷2-4-4
営業:12:00~20:00 水木休
photographs_Takao Ohta
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より