リペア、その先へ。今の自分にあわせて靴を再生・最適化(=HACK)する。
使い古され、靴棚に眠っている靴は誰しも思い当たるものがあるはず。それを今の自分にあわせて再生・最適化(=HACK)する。
今回「HACK」する靴は、古い『トリッカーズ』の「セントジェームズ・コレクション」のモンクストラップ。シングルレザーソールとバーガンディカラーの靴はそのままでも魅力的だが、ソールには穴が空き、アッパーは雨シミで変色しているところがあった。
そこでオールソール交換を機に大きく変えようと『ユニオンワークス銀座』に相談。靴の状態を確認して提案されたのが、ソールを軽量で厚いスポンジソールに換え、アッパーをバーガンディから黒に染めるというカスタマイズ。
ソールまわりの仕様は近年各シューズブランドでもよく提案されているスタイルで、カジュアル感があり、雨などへの強さも備えている。ウェルトは靴全周のものにつけ直し、併せてストームウェルト仕様にしてよりラギッド感を。果たしてその仕上がりは?
英国靴らしかった以前の雰囲気とは一線を画し、モードな服とも合わせられそうな雰囲気に。履き心地も激変して軽快になった。
【GUIDANCE&MENU(修理メニューと説明)】
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3_より軽量でボリューム感あるアウトソールとしてオススメのスポンジソール2種。右がヴィブラム、左はロンドンスポンジ。今回はよりラギッドなロンドンスポンジを選択。4_染め替えはサンプルを見ながら検討。ブラウンから黒は比較的うまくいきやすいが、革の色や素材、状況などで仕上がりはかなり違ってくるとも。まずは相談を。
【PROCESS(工程)】
1_すくい縫いまで外した状態。通常はランド(ハチマキ)がついたかかと周りにもウェルトをつけ直していく。2_リウェルトは手作業で。すでについている穴をひろって縫い、リブに余計なダメージを与えないためだ。修理ならではの工程。3_リウェルト後の状態。全周のウェルトになっていることがわかる。
4_ラバーのミッドソールを出し縫いしていく。今回はデザイン的なアクセントとして生成りカラーの糸をチョイス。5_アウトソールをミッドソールに接着した後、ソール周囲をヤスリで整える。6_コテにロウをつけ、コバ部分をしめる(硬く仕上げる)作業。ステッチカラーが明るい色なのでより慎重に。
【FINISH(仕上がり)】
全周のストームウェルトとロンドンスポンジソールで、俄然ラギッドな印象に。一方黒に染め替ることで、ミニマルな印象が生まれている。白すぎない生成りカラーのステッチが、染め替えのブラックアッパーに対し適度なアクセントになっている。今回の修理内容は、リウェルト ¥11,000、スポンジソールオールソール ¥14,300、黒染め ¥18,700、バックルのゴム交換両足 ¥4,400。
1_ワークシューズテイストのロンドンスポンジソールのパターン。2_厚底だけではなく幅広のストームウェルトにすることで、より現代的なバランスに。3_今回は古く痛んでいたバックル部のゴムも交換。ただしバックルは退色した質感が黒とも相性がいいかもしれないと、以前のものを流用している。もちろんバックルも交換可能で、スタイルも複数用意されている。
今回ご対応いただいた『ユニオンワークス銀座』の鳥海悠介さん。同店ではこうしたカスタマイズのサービスも充実している。アウトソール交換だけでも雰囲気は大きく変わる。関心がある方はまずは相談を。
shop information
『UNION WORKS GINZA(ユニオンワークス銀座)』
住所 : 東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル103
電話 : 03-5159-5717
営業 : 12:00~20:00 水休
photographs_Takao Ohta
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より