彼らの、いま履きたいベーシック。〜『BARBER BOYS』代表/樅山敦〜

LASTが注目する個性的かつスタイリッシュな装いで知られる各界で活躍する方々に、「あなたにとってのベーシック」、「いま履きたいベーシック」な靴について聞くシリーズ企画。

今回お話を伺ったのはヘアメイクアップアーティストとして数多くの広告やファッション誌で活躍中の籾山敦さん。思い入れのある「ベーシックな靴」について訊ねてみた。より職人的な仕事へと軸足を移した頃に出会った『トム・フォード』が一番のお気に入りだった。

籾山氏が所有する定番靴
TOM FORD サイドゴアブーツ

「トム・フォードは、ハイブランドというよりもいい洋服屋という感じ」と語るヘアメイクアップアーティスト樅山敦氏。

ヘアメイクとして雑誌や広告の第一線で活躍してきた樅山敦さんが、バーバーの経営を決断したのは2007年。華やかな現場を渡り歩く日々から、自分がつくり上げた世界へ客を招き入れる、より職人的な仕事へ軸足を移した頃に出会ったのが『トム・フォード』だった。

「以前は新しモノ好きで、シーズンごとにいろいろなブランドのものを買っていたけれど、もう10年以上、トム・フォードしか着ていません。僕にとっては、ハイブランドというよりは、いい洋服屋という感じなんですよ」

思い起こせばトム・フォードがグッチのデザイナーを務めていた時代、ステファノ・ベーメルが靴を手がけたこともある。トム・フォードにとって、ビスポークやテーラリングといった工房仕事は重要な要素。そこに伝統を背景にした感性を加え、男の装いの世界観を追求する。そのバランスが絶妙で、技術が勝てばクラフツマンシップに、感性が勝てばモードに傾いてしまう。「いい洋服屋」とは、ファッションを間近で見てきた樅山さんらしい言葉だ。

「僕の実家も理髪店を営んでいたんです。バーバーを始める際に、自分のルーツや美的価値観に重きを置くトム・フォードの姿勢にシンクロしたんですよね。ある種の男の終着点のようなダンディズムというか……。そこに全面的に身を委ねているから、ショップでは担当者に任せて、自分で選ぶこともしません」

移転開業した現在のバーバーは、内装もトム・フォードの世界観を意識した。

とはいえ、数年前に誂えたネイビーのスーツと昨年購入したサイドゴアブーツのコーディネートは、映画「007」やスタイル・カウンシルに影響を受けたという樅山さんらしい、ブリティッシュな雰囲気のスタイル。この装いで店に立つこともあるという。

「スーツも靴も、決して着心地がいいわけではなく、むしろ窮屈なほど。でも、仕事を終えて脱いだときには、達成感を含んだ心地よさがある。職人のような仕事をする男には、それくらいがいいと思うんですよ」

Atsushi Momiyama(樅山敦) プロフィール
ヘアメイクアップアーティストとして数多くの広告やファッション誌などで活動。2007年に自身の理髪店をオープン。同店は2011年に代官山に「BARBER BOYS」として移転オープン。2015年より、整髪料ブランド「CHET」のプロデュースも行っている。http://barberboys.jp

text_Daisuke Saito, photographs_Kazuhiro Shiraishi
〇 LAST issue17 より


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