靴には、身体をプロテクトし、日常活動を支える「ギア」的な側面と、着用者の容姿を構成する、装いの一要素という側面がある。そして、装いにおいて、靴とくに革靴は、面積的に占める割合が少ないにも関わらず、その人の印象を左右するような大きな影響を及ぼしていることが多々ある。
さらに、他のアイテムとの相関関係により、靴の映り方は大きく変わる。妙味を感じさせるか、それとも違和感となるか。それはまさに紙一重といっていいかもしれない。
今回は前回に引き続き、装いの達人である「ビームス」クリエイティブディレクターの中村達也氏に革靴と服の着こなしについて聞いた。
革靴と服にまつわる[相関とアイデア]についてビームス中村氏に聞いた。
Grey Suits
styling&comment by Tastuya Nakamura BEAMS
〔着こなし解説〕
1.モノトーンでシンプル過ぎると味気ないコーディネイトになるので、タブカラーシャツで襟もとに変化を。ネクタイはパープルを差し色に使っている。
2.『BEAMS F』オリジナルスーツは、日本で3本の指に入る有力工場製。美しいシルエットと、立体的なパターンによる快適な着心地が特徴。
3.モノトーンカラーのスーツにはシャープに見えるブラックカーフが好相性。丈の短いサイドエラスティックブーツなのでパンツは履き口が見えるような短丈はNG。
リモートワークなどが広がる中で、ビジネスウェアとしてのスーツの出番は減っているともいわれるが、メンズファッションにおけるスーツは、定番性への志向が強まる中で、かえって存在感が増しているように感じられる。そこで、男性の装いとして基本的なグレーのスーツについて、中村氏に聞いた。
「イタリアの肉厚なサキソニー生地を使用した『ビームスF』スーツ。モノトーンのハウンドトゥース柄が、クラシックながらモダンなムードも感じさせます」。さらに着こなしについて、中村氏は次のように語る。「モノトーンのチェックはモノトーンでシンプルにまとめるとシックな印象になりますが、シンプル過ぎると味気ないコーディネイトになるので、少しだけ差し色を使うとモダンな印象に見えます」。
靴はモノトーンのスーツとの相性を考えてアッパーはブラックカーフ、そして秋冬注目のブーツから、短丈のサイドゴアブーツをピックアップ。「個人的に、これはクラシックなスーツに合う唯一のブーツだと考えています」と中村氏。
Profile 中村達也氏
『ビームス』クリエイティブディレクター。2007年より現職。自身のブログ「ELEMENTS OF STYLE」(https://ameblo.jp/beams-class/)の他、ウェブメディア「MR_BEAMS」やインスタグラムなどで、時代を見据えたスタンダードなメンズスタイルを発信。
photographs_Toru Oshima
〇 LAST issue21 より