慣れ親しんだ英国、そして英国の靴たち。
宮崎俊一
EDWARD GREEN, CHURCH’s
土曜朝のロンドン・ポートベロー。ツイーディな、それでいて軽量だと一目でわかるジャケットを羽織り、ストール、量感あるトラウザーズに、足元には刺繍が入ったグリーンベルベットのルームシューズ。慣れた手つきでヴィンテージウォッチを扱うその様子に、てっきりノッティングヒル界隈に住む時計好きの粋人かと思っていた。それが宮崎俊一氏との邂逅だった。
「海外出張の際には、長い時で1ヶ月ほどロンドンに滞在します。トッテナム・コート・ロード近辺に宿をとることが多いのですが、地下鉄1本で行けるので、ポートベローのマーケットなどにはホテルで過ごすスタイルにちょっと何か羽織る感じで出かけてしまいます」
まさに旅慣れた紳士のスタイル、行動様式だ。そんな宮崎氏が初めて英国に行ったのは1993年。その時は友人の紹介で、『エドワード グリーン』『チャーチ』そして『トリッカーズ』のファクトリーを巡ったという。今回、いまなお履き続けている靴として挙げていただいた靴は、その時に入手したものだ。
「ノーザンプトンの『エドワード グリーン』で、工場の在庫を特別に購入させてもらった際、自社の靴を扱っている店として紹介されたのが『フォスター&サン』でした。当時エドワード グリーンが88というラストで既製靴をつくっていたのです。そこで黒のフルブローグを購入しました。自分にとっての初めてのエドワード グリーンは『ロイドフットウェア』の靴。だから英国で、どうしても本場の『エドワード グリーン』が欲しかったのです」
そして『チャーチ』の「コンサル」もロンドンで購入。さらにこの靴はノーザンプトンの工場に修理を依頼している。
「修理の仕上がりがかなりラフな感じで、ユニオンワークスの中川さんも目を丸くされてました。でも、そういうところも英国らしい気がして、実は気に入っているんです」
Shun-ichi Miyazaki
株式会社松屋シニアバイヤー。1989年より松屋に勤務し、現在は銀座本店のバイヤーとして活動する傍ら、『成功する男のファッションの秘訣 60—9割の人が間違ったスーツを着ている』(講談社)ほか著書も多数上梓している。
photographs_Hirotaka Hashimoto
○雑誌『LAST』 issue.18 『達人たちの「持続性」ある靴。/ 中込憲太郎』より抜粋。