ジョンロブのアーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼに聞く、ウィリアムの魅力、そして現代におけるジョンロブ。

「私は『ジョンロブ』の本質的な価値を見い出して、それをさまざまな形で守ってきたのだと思います」

 2014年から『ジョンロブ』のアーティスティック・ディレクターを務めるパウラ・ジェルバーゼ氏は、自身の5年の歩みについて、そのように語った。

 彼女がアーティスティック・ディレクターに就任して最初に行ったのは、『ジョンロブ』の起点であるジョン・ロブ氏という紳士について知ることだった。彼女自身考古学的アプローチと語る方法で、ジョン・ロブ氏という若き紳士が故郷コーンウォールを後にして、徒歩で新天地ロンドンを目指したというヴィジョンを得たのだった。

「彼はもちろんクラフツマンだったわけですが、同時に冒険者であり、パイオニアだったのです。現代の言葉でいうならアントレプレナーでしたし、何よりダイバーシティ、越境者でした。そのあり方は現代に通じるもので、私も自分自身を重ねあわせることができました」

 このジョン・ロブ氏のイメージをキー・バリューに、ジェルバーゼ氏は『ジョンロブ』のものづくりを展開してきた。例えば軽量で活動的な「ライトウェイトウォーキングソール」、これは歩いて越境したジョン・ロブ氏のイメージを起点に、現代生活において、より軽く、より活動的に動けるソールを、物性テストなどを重ねて開発したものという。

 そこで彼女に、今回の本誌のテーマであるサステイナビリティについて、どう考えるか聞いてみた。

「いまファッション業界で語られているその言葉は、バズワードが多いと思います。そこに惑わされては、サステイナビリティの本質を見失ってしまうように感じます。ひとつ言えるとすれば、サステイナビリティはデザインやクラフツマンシップから始まる、ということでしょうか。なぜならそれらは、タイムレスなものを生み出せるからです。優れたデザインのもの、クラフツマンシップが発露したもののライフスパンは、人の一生を軽々と超えていきます」

 そして、『ジョンロブ』は真にサステイナブルな存在であり、それは今年75周年を迎える名モデル「ウィリアム」にも当てはまるとも。

「まさにタイムレスなデザインです。そしてウェルバランスで、イノヴェーティヴでもある。今回75周年にあたって、各時代のウィリアムを紐解きました。その中から90年代の、ワックススエードを使った靴等をリイシューしています。さらに現代のヴァージョンとして、0015ラストのウィリアムを発表しました」

JOHN LOBB Artistic Director
Paula Gerbase
パウラ・ジェルバーゼ

英セントラル・セント・マーティンズ卒業後、サヴィル・ロウでのテーラードウェアの経験等を経て、自身のブランド『1205』を展開。2014年より『ジョンロブ』のアーティスティック・ディレクターを務める。


photographs_Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌『LAST』 issue18 「サステイナブルな革靴、 を選んでみる。」より抜粋。

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