靴を仕立てる。【ケンタロウ・ソヤマ】

いまや世界的にもその存在が取り沙汰される日本の職人たち。今回は比較的アクセスしやすい東京と関西を拠点としている靴職人をガイドする。


Kentaro Soyama
やわらかさを感じさせる靴と靴づくりを目指して。

男性文化色濃いメンズシューズの世界にあえて柔軟な風を吹かせるベテラン職人。

WORKS
ネイビーカラーのミュージアムカーフでつくったセミブローグ。やわらかさが感じられるシルエット。ウェルトのウィールは10番か12番が曽山さんの基準だと思う。

 ホームページから問い合わせして、メールで送られてきた住所周辺に到着した時、意外な印象を受けた。京都駅の南側、イオンモール、そして東寺にもほど近い住宅地。路地の一角にひときわ瀟洒な建物を見つけると、そこが靴職人・曽山健太郎氏の自宅兼アトリエだった。さらに案内された部屋は、カフェを思わせる、どこか女性的な雰囲気が印象的だった。

 曽山氏が自身の靴づくりを本格スタートするのは、実は2019年からである。その前は京都の某オーダーシューズ工房にて10年、ハンドソーンの靴づくりを担っていた。さらにそれ以前は、英国・ロンドンに在住して、ビスポークシューズのボトムメイカー(アウトワーカー)として働いていた。

 大学を卒業して企業に就職した後も、学生時代に訪れた英国が気になっていて、靴や家具への興味もあり、英国行きを決意する。英国では語学を学んだ後、靴学校コードウェイナーズカレッジに入学。しかしデザインやマーケティング中心の授業に不満を感じていたところ、「週2足つくらせてくれる学校がある」という話を聞き、トレシャムインスティテュートへ。ちなみに2学年上には川口昭司氏がいた。学校卒業後は靴職人イアン・ウッドのもとで修業するも、半年で「もういいだろう」と独立を促され、その後はジョン・ロブ、エドワード グリーン、ガジアーノ&ガーリングそしてフォスター&サン等のリペアやボトムメイキングの仕事をアウトワーカーとして請け負った。「英国には7年弱いました。ビザなどが厳しくなったこともあって、腰を据えたいと2009年に帰国したのです」と曽山氏。帰国した当初は、独立するというよりは、自分の理想に合致する靴店があればそこで靴づくりをするのもいいと思っていたが、実際にはなかなか難しかった。そんな中で、もし住むならば京都がいいと思っていたという。「たとえば桜の時期に採寸して、祇園祭に仮縫い、紅葉とともに納品、そんな季節感が感じられる靴屋もいいのではと考えたのです」と曽山氏。そこで京都の靴工房に勤めることで、木型やパターンなど、ボトムメイカーをやってきた自分に不足していた部分を徹底的にブラッシュアップしたという。木型に関しては古いものを数々参照して取捨選択を繰り返していった。

靴づくり用のベンチはなんと奥様がDIYで製作したもの。
右はガジアーノ&ガーリング、中央はジョン・ロブが発行した推薦状。曽山氏の仕事が認められた証である。
整頓された工具の棚。「普段目ししているものが、つくるものに影響を与えるように思うんです」と曽山氏。アトリエは「好きなもの」で構成されている。

 そんな曽山氏の最近の靴づくりに話が及んだ時に、彼が話した次のようなエピソードが印象に残った。

「以前英国にいたときに、ジョージ・クレバリーにいたモリオさんに、靴を見てもらったことがありました。堅いね、と言われて、その時は意味がわからなかったのですが、今思えば当時はなんでもかんでも細かくやっていたんです。実は少し粗めにつくったほうが、ふんわりしていい感じになります。シャープでありながらも、やわらかさを持った靴というのが理想ですね」

 この「やわらかさ」は彼の靴づくり、そして靴職人としてのあり方のキーワードのように感じた。例えばこの自宅兼アトリエ兼ショップという形態についても、彼は次のようにその意図を語る。「この家を建てたときから、このようにしたいと思っていました。例えばロンドンのジョン・ロブのような靴店だと階級社会と密接に繋がっていて、そういう人しか来ない。もう少しアットホームな感じで、ほっと落ち着ける場所を提供したいと思ったんです。だから商業エリアは避けて、新幹線おりてちょっと歩いたら来られるような場所にしました。お客様には、とにかくリラックスして、そして飾らずご自身のことをお話ししてほしいですね」。また、そうした姿勢は奥様がDIYでつくったというインテリアとも呼応している。「例えばヴィンテージの重厚な家具と靴を組み合わせるような、男性っぽい高級さよりも、女性目線でつくられたDIY感のほうが自分としては気に入っています」。

「やわらかさ」の中にある、そこはかとない「やさしさ」も、感じられた。

フォスター&サンのラストメイカーだったてテリー・ムーア氏から送られた曽山さんのラスト。「自分で木型を削るようになって、すごいものをいただいたんだなと。学ぶところが多いです」と曽山氏。
木型をスクラッチする曽山氏。
トライオンは最低1回。コルクのソールで、切って中を確認することもある。
付属のシューツリーは、屈曲部分周辺に丸みをもたせて、入れやすさ、抜きやすさがある。

SHOP INFO
Kentaro Soyama

価格・納期などの目安
ビスポーク
¥298,000〜 仮縫い1回、納期1年〜

住所:JR 京都駅より徒歩約12分
Mail:ksoyama@nike.eonet.jp
HP:https://kentarosoyama.wixsite.com/ksoyama

※この特集中の価格、納期などはあくまで参考です(2019年4月時点)。素材や製法、各店の状況によって変わることもあり、オーダーをお考えの場合は各靴店にお問い合わせください。なお、表記価格は特記なき場合はすべて税抜きです。
※各店とも、基本的に要予約です。連絡先や各ホームページからご連絡ください。


photographs_Satoko Imazu
photographs_Hirotaka Hashimoto
text_Yukihiro Sugawara
○雑誌『LAST』issue.16 「Shoemakers in Japan 2019 靴を仕立てる。」より抜粋

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