『madras(マドラス)』名古屋で引き継がれる靴づくりを訪ねて。

『マドラス』の靴。その最大の特徴は、手仕事も交えたファクトリーでの靴づくりから生み出される流麗なシルエットである。『マドラス』のファクトリーでは、手仕事を駆使した靴づくりが今日も行われていた。

[『LAST』issue.9(2015年10月)初出]


各プロセスで作業コントロールを行う「マドラス式」。随所に手仕事が盛り込まれる。

「マドラス式」、同社のファクトリーで、そのように呼ばれている手法。その特徴のひとつは、ラスティングのプロセスを、底付けのプロセスと分けて、それぞれの工程の担当者が作業をコントロールしていることだろう。それは、また、マドラスの靴に対する価値観を端的に反映してもいる。

LASTING「木型を反映する丁寧なつり込み」

ラスティングのプロセスの責任者は、靴づくり5年目(取材訪問時)の宮田雄基氏。新卒でマドラスに入社し、フィニッシングを経てこの工程を担当するようになった。

縫製されたアッパーとランニングに、カウンターなどの芯材や補強を入れ、木型の形状に沿って、インソールなどとともにつり込み、くせ付けをする。それがラスティングであり、靴のシルエットを決定づける重要なプロセスである。

マドラスでは、機械を使ったラスティングの中に、より人間的な、手仕事の要素を巧みに盛り込んでいる。ヒールカウンターなどの部材は、水を含ませて、くせ付けしやすいように下準備をした上で、作業を行う。

また、機械によるつり込みだけでは力のかかり方が均等になってしまうため、ウエスト(土踏まず)部などはさらに手作業によってつり込む。その際、中底の角を出すようにする。

中底の角がしっかりと出ているのがわかる。

MAKING「靴の安定感を左右する工程」

底付けも重要な工程の一つ。マドラスでは底の仕様も多種多様だ。底の仕上げや模様入れもこのメイキングの工程で行う。手仕事によるものも多く、職人の技が光る。

メイキングのプロセスの責任者は、靴づくりのキャリア22年(取材訪問時)のベテラン、高橋努氏。婦人靴のメーカーを経て、3年前にマドラスに加わった。

FINISHING「繊細な感性と丁寧な仕事が生む仕上がり」

かくして生み出されたシルエットを維持するように、しっかりと木型の形に沿って底付け=メイキングが行われ、フィニッシングへ。色づけやポリッシュもまた、熟練の技による手仕事が多く盛り込まれている。

ファクトリーでは、靴の色に合わせた、ベルトの色づけも行っている。熟練の職人の手作業で、何度も色を重ねることで仕上げられる。

果たしてマドラス式とは、既成靴づくりの随所に盛り込まれるハンドワーク、そして自社にて継承される独特のクラフトマンシップを共有する、符牒、あるいはマニフェストなのかもしれない。

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