in Holland
全てをオープンに
開かれた精神が
イノベーションを生む。
「ECCO」のロゴは、本来閉じているはずの「O」に隙間がある。
「すべての文字が”空いて”いる、これは、エコーが外に対して常に開かれていることを象徴しています」
こう語るのは、「エコー・レザー」社の代表兼エコー社上級副社長のパノス・ミタロス氏。その言葉通り、エコー・レザーはエコー以外との取引も多く、それは取扱量の半分に達するという。こうした外部との交流もあり、エコー・レザーは次々斬新な革を世に送り出している。熱に反応し色が変化する「クロマタファー」、極薄高強度な「ダイニーマ」、透明なレザー「アパリシオン」など、いずれも革の既成概念を軽々と超えるものだ。
「私たちが提供しているのはイノベーションです。レザー産業というと変わり映えしない、伝統的なものと思われがちですが、それを打破するようなものをつくりたいと思っているます。ゆえに私たちは例え少ない数量でも、イノベーションを求めるデザイナーらと協業しています」
こうしたミタロス氏の言葉は、アムステルダム郊外のタナリーの現場を見ることで、より強く実感させられた。250名のワーカーが従事するこのタナリーは、世界的にも最大級。鞣しの薬品に耐えうるようあえて木の梁(beam)を採用した「ビームハウス」内には、大型ドラムが何台も並ぶ。そしてその規模以上に特筆すべきなのが、敷地内にあるR&Dラボの存在。そこはまさに「小さなタナリー」と表現できるほど設備が揃い、鞣しや染色、加工から仕上げまで、革づくりの全工程が実験できるようになっていた。
「私たちは日々新しい革を研究していますが、年に一度、外部の方々に向けてこのラボを開放する『HOT SHOP』というイベントを行います。そこで若いデザイナーたちから出てくる突拍子もないアイデアに、ほんとうに触発されますね」
こう語るのは、イノベーション・スペシャリストのマキス・サッペル・グロウ氏。イノベーションを真に支えているのは、その設備以上に、人々に開かれた精神なのかもしれない。