『トッズ』と『エンダースキーマ』のコラボレーション。発想とデザイン、そしてクラフト。

18の大きなペブルが本底から顔を出していた。トッズを代表する名靴「ゴンミーニ」から着想を得ているのは自明なのだが、その規格外の変化に目を奪われる。この秋に登場する「トッズ ファクトリー」のカプセルコレクションの一足だ。

そのコンセプトは「デザイナーやアーティストとのコラボレーションにより、革新的で慣習にとらわれないプロジェクトを実現する」というもの。であるとするならば、エンダースキーマの柏崎亮氏との協業は、留保なく成功を遂げたようだ。なにしろ革新的で慣習に甘んじる様子もなく、それでいてラグジュアリーなアイテムとして息をしている。

デザイナー本人に聞いた。

上から時計まわりに、カーフレザーを使った「MAXI PEBBLE LACE UP BOOTS」¥174,900、ピンクスエードの「GOMMINO SABOT」¥86,900、クロコ型押しのカーフとスエードのコンビネーション「MAXI PEBBLE TASSEL MOCASSIN」¥124,300、カーフ&カーフスエードとラムファー「FUR MOCASSIN」¥119,900(エンダースキーマ×トッズ)

カプセルコレクションのキーワードとして考案されたのが、「TOD’S⇄DOT’S」

「ペブルを大きくすること。これは今回のコンセプトと同時に生まれたアイデアです。ゴンミーニという完成されたプロダクトをまくらに、どういうアプローチができるかというのが発想のスタートにありました。一方で、作りたいものをバラバラとデザインするのではなく、カプセルコレクションとして、線を描くような何かが必要だとも考えました。特に今回はバッグやレディトゥウェアまで、トータルに表現するというお題があったので」

そうして考案されたキーワードが「TOD’S⇄DOT’S」だった。単にブランドネームをもじったもののようでもあるが、この言葉は実のところ、とても有効に機能している。

右_3つの異なる素材のストラップが組み合わされたショルダーバッグ「CIRCLE BAG SMALL」¥251,900、左_ストラップを引くと巾着型の小物入れにもなるボルドーゴートスエードのハット「TULIP HAT」¥94,600(トッズ・ジャパン)

「TとDを入れ替えただけといえばそうですが(笑)。ドットというのはゴンミーニのソールのペブルのことであり、丸を想起するものなので、そのプロポーションがバッグになり、コレクションムービーも円環状のループするものになりました。こんなふうに、プロジェクト全体の軸足になりながら、すべてを包み込む言葉でもあります。このアイデアが生まれた時、すべてが見えた感じがしました」ひとつの言葉を端緒に、コレクションの全体像は自在に紡がれた。

一方で、靴づくりにおいては徹底的に「もの」を介したコミュニケーションで成り立っていたのだとか。「感染症の影響もあって、ミラノとマルケの本社と工房に行けたのは一度きり。そこからは、木型をリクエストして送ってもらって、絵型やサンプルを送り合いながら、精度を上げていく作業になりました。リモートで会話もしますが、言葉だけではどうしても難しい。やりとりを続けていくうちに、もの自体が共通言語になっていきました」

それはまさしく、靴づくりを主業とする両者だからこそ成り立つ、クリエイティブな対話だった。具体的であるがゆえに、時としてシビアなやりとりにもなる。「僕らのものづくりのあり方、彼らが大切にしているところ。そこは、ぶつかることもある。履き口の深さ、捨て寸のバランス。細かなところでも、お互いのスタンダードが違います。素材のクオリティもそう。とても勉強なったし、面白かった。より良いものをつくるための対話ができたことは確かです」

Ryo Kashiwazaki
1985年、東京都生まれ。大学在学中より靴メーカーで靴づくりを学ぶ。2010年に自身のブランド『Hender Scheme』を開始。2015年からはパリでの展示会も行う。現在は浅草を拠点にシューズやバッグ、革小物を中心とした年2回のコレクション(夏秋と冬春)を手掛ける。

information contact
トッズ・ジャパン
tel:0120-102-578

photographs_Toru Oshima, Shinsaku Yasujima, text_Satoshi Taguchi, styling_Tomohiro Saito
〇 LAST issue21 より


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