18の大きなペブルが本底から顔を出していた。トッズを代表する名靴「ゴンミーニ」から着想を得ているのは自明なのだが、その規格外の変化に目を奪われる。この秋に登場する「トッズ ファクトリー」のカプセルコレクションの一足だ。
そのコンセプトは「デザイナーやアーティストとのコラボレーションにより、革新的で慣習にとらわれないプロジェクトを実現する」というもの。であるとするならば、エンダースキーマの柏崎亮氏との協業は、留保なく成功を遂げたようだ。なにしろ革新的で慣習に甘んじる様子もなく、それでいてラグジュアリーなアイテムとして息をしている。
デザイナー本人に聞いた。
カプセルコレクションのキーワードとして考案されたのが、「TOD’S⇄DOT’S」
「ペブルを大きくすること。これは今回のコンセプトと同時に生まれたアイデアです。ゴンミーニという完成されたプロダクトをまくらに、どういうアプローチができるかというのが発想のスタートにありました。一方で、作りたいものをバラバラとデザインするのではなく、カプセルコレクションとして、線を描くような何かが必要だとも考えました。特に今回はバッグやレディトゥウェアまで、トータルに表現するというお題があったので」
そうして考案されたキーワードが「TOD’S⇄DOT’S」だった。単にブランドネームをもじったもののようでもあるが、この言葉は実のところ、とても有効に機能している。
「TとDを入れ替えただけといえばそうですが(笑)。ドットというのはゴンミーニのソールのペブルのことであり、丸を想起するものなので、そのプロポーションがバッグになり、コレクションムービーも円環状のループするものになりました。こんなふうに、プロジェクト全体の軸足になりながら、すべてを包み込む言葉でもあります。このアイデアが生まれた時、すべてが見えた感じがしました」ひとつの言葉を端緒に、コレクションの全体像は自在に紡がれた。
一方で、靴づくりにおいては徹底的に「もの」を介したコミュニケーションで成り立っていたのだとか。「感染症の影響もあって、ミラノとマルケの本社と工房に行けたのは一度きり。そこからは、木型をリクエストして送ってもらって、絵型やサンプルを送り合いながら、精度を上げていく作業になりました。リモートで会話もしますが、言葉だけではどうしても難しい。やりとりを続けていくうちに、もの自体が共通言語になっていきました」
それはまさしく、靴づくりを主業とする両者だからこそ成り立つ、クリエイティブな対話だった。具体的であるがゆえに、時としてシビアなやりとりにもなる。「僕らのものづくりのあり方、彼らが大切にしているところ。そこは、ぶつかることもある。履き口の深さ、捨て寸のバランス。細かなところでも、お互いのスタンダードが違います。素材のクオリティもそう。とても勉強なったし、面白かった。より良いものをつくるための対話ができたことは確かです」
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トッズ・ジャパン
tel:0120-102-578
photographs_Toru Oshima, Shinsaku Yasujima, text_Satoshi Taguchi, styling_Tomohiro Saito
〇 LAST issue21 より