ドレスシューズとの着こなしで、相性が最適ともいわれるスーツやジャケットのテーラードウェア。いま改めてその魅力と、「着方」そして「履き方」を考えるために、テーラードウェアの担い手を中心に、達人たちを訪ねた。
“スーツを着ると、仕事しよう、という気になるんです”
「阪急メンズの芝崎さん」というと、長年紳士靴のバイヤーとして知られた存在だった。現在は阪急メンズ大阪の、オーダー・スーツなど紳士服を担当している。リモートワークが進む昨今、スーツをめぐる環境は厳しいのでは、という問いに、芝崎さんは次のように答えた。
「若い人の間では、スーツは自分を〝格上げ〞してくれる服、という感覚があります。そこで、セオリーなどはひとまず置いて、オーダー・スーツをかっこいいものとして提案したところ大きな反響がありました。お客さまにルールを押し付けず、ご希望を伺って共感するスタイルのオーダーメイドです」。さらに最近は身体を鍛えていて、既製品が合わない若い人も多いことから、オーダーメイドには可能性があるとも。
芝崎さん自身も、もう一度基本的なテーラードのスタイルを知りたいと、現職になってからは定期的にスーツを着るようにしている。その結果、好んで黒の靴を履くようになった。「これは、日々普通に履けるものをと、『マーキス』でオーダーした靴です。靴は十数年担当していたので、確信めいたものがあるのですが、スーツはまだまだわからないことがあります。ただ、やはり長く着られるものは、日々着られるものでもあり、その点はドレスシューズもスーツも同様ですね」
Yusuke Shibasaki
阪急メンズ ラグジュアリー商品部メンズオーセンティック担当バイヤー。阪急メンズの紳士靴バイヤーを長年務めた後、2022年より現職。テーラードウェアからラグジュアリー、そして紳士靴まで幅広くカバーしている。
photographs_Satoko Imazu
〇 LAST issue.22より