Components of a Readymade Shoe 紳士靴の構成要素を知る。

上面

アッパー

靴の上部表面に使われる革のこと。レンドのこのモデルでは、日本製のキップ(生後6ヶ月〜2歳の牛革、海外ではカーフの範疇に入る)を使っている。

アッパー用の糸

生成り色のほうが下糸、黒いほうが上糸。下糸はテトロン(ポリエステル)、上糸はビニロン(PVA繊維)を使用。上下糸両方ともビニロンを使う場合もある。

底面

アウトソール

レンドでは、ラバーソールの部材は英国 HARBORO社が手がけるダイナイト(Dainite)ソールを採用している。ゴルフシューズを思わせる突起が特徴。

アウトソール(レザー)

本底ともいわれる。レンドでは 4.5 ミリ厚のイタリアンベンズ(ヴェジタブルタ ンニング)を使っている。ギン面つきの革の表面を少し 擦って使っている。適度な堅さと包丁切れの良さを兼ね備えたものが理想。

ヒール

ソール用の革の余ったものを積み上げてヒールを形成する。ダイナイトなど、ゴムのトップピースの場合でも、中は積み上げで形づくられる。

出し縫い用の糸

本底を縫うための糸で、麻素材。上糸(黒)と下糸(生成り)があり、下糸にはチャン(松脂)が塗られている。

ゴールドカラーのほうは真鍮製の飾り釘で、ヒール接地面見える場所に配される。一方シルバーカラーのほうは鉄製で、積み上げのヒールを固定するために使われる。

ソックシート

靴内部インソールの上、踵から踏まずにかけて配されるパーツ。アッパーのあまりを1ミリ厚まですいたものを使う。ソックの裏側には低反発のスポンジを配している。

シューレース

靴紐のこと。レンドではロウびきの平紐を採用している。作っているのは、リボンの生産で世界にその名が知られる木馬リボン。


「紳士靴業界でよく語られる警句のひとつに〝見えないところほど手を抜くな〟というものがあります」

このように語るのは、レンドのディレクター吉見鉄平氏。その言葉の通り、レンドの靴では一見外からは見えない構造や部材に関して品質を追求している。

レンドの靴の製法であるグッドイヤーウェルテッド製法は、ウェルトを使い、そこにアッパー、ライニング(裏革)そしてインソール(中底)裏の布製のリブをすくい縫いして縫製する。その際問われるのが、インソールの品質とつくりだ。レンドではヴェジタブルタンニングで鞣された牛のショルダー部分の革を使い、そこに独自に位置を指定しリブを貼った、別注のインソールを使っている。

「このリブの巻き具合(貼る位置)で、仕上がりのコバの出方が変わってきます。土踏まず周囲は、8ミリほど内側に入れています」(吉見氏)

吉見氏は長らくメーカーに籍を置き、靴の生産現場に精通している。そこで培われた見識が、部材の構造やつくり方に反映している。このインソールの構造と品質はまさにその一例といえるだろう。

さらに、完成した靴からは確認することができない、踵部の補強と型づけのためのヒールカウンター(月型芯)についても、独自のこだわりを持って選んでいると吉見氏は語る。

「踵の形にあらかじめ成型されたものもありますが、レンドでは成型していない芯材を使って、靴をつくる過程で形をつけていきます。また月型芯はギン面を取った後の床革を2枚貼りあわせたものを使っています。これは作業上が大変になりますが、仕上がりが硬くいい案配になります」

こうした各パーツへの追求が、靴の品質を決定づけてもいるのだ。それゆえに靴の構成要素を知り、各部材について子細に見ていくことは、靴の真価を理解することでもある。

RENDO
浅草のシューズメーカーを経て、パタンナーとして独立した吉見鉄平氏が2013年にスタートしたシューズブランド&ショップ。
http://www.rendo-shoes.jp


photographs_Takao Ohta
text_Yukihiro Sugawara
○ 雑誌『LAST』 vol.11 「Components of a Readymade Shoe 紳士靴の構成要素を知る。」より抜粋。

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