保護のため、ワックスをほんの少し豚毛のブラシにとって、靴全体にブラッシングする。かけ方によってツヤを調整することもできる。革にワックスが馴染んでくるとツヤが出てくる。
ブラシにワックスを取った後は缶のヘリでこそいで落とし、量を調節すること。このプロセスもワックスの量はほんの少しが肝要。保護とはいえ、革は厚塗りを嫌うのだ。
今回のブラッシングは同色のワックスを使ったが、黒などであえて遊んでみても面白いという。ワックスだから革に染み込まないので小さな冒険も可能だ。違う色を使うのはこれまた上級者のテクニックだ。
再度、山羊毛ブラシで光らせるのだが、ここで登場したのがハンドラップ。ハイシャインでは布を濡らして磨くが、ここではよりよく自然なツヤを出すために、なんとブラシに水をつける。
数滴の水をブラシの上にのせる。ここでも多すぎないよう気をつけること。それを手でブラシ全体にのばす。湿っているか、否か程度の微かな潤いで充分。感触を確かめてからバッフィング。
どんどん光が強くなってくる。革の状態を確かめながら、ここまでの工程がきちんとできていないと、ハイシャインは上手に仕上がらないと杉村さん。仕上げに山羊毛ブラシに水、このやり方は簡単で効果的だ。
最後にコバの手入れ。杉村氏はコバの色抜けもエイジングの味だと思っているが、コバが光ると確かに靴の印象が上品になるという。ここも敢えて指を使ってワックスをコバに塗ってみよう。
使う色は同色のもの。直接色抜けした部分に色を乗せていく感じ。厚塗りにならないよう調節して。傷みやすいエッジ部分、トウやヒールの下部もきちんと塗っていこう。ここは難しいことは何もない。
その後、豚毛のブラシでコバを磨く。どんどんツヤが出てくる。靴の印象が瑞々しくなってくる。コバがきちんとケアされていると、大事にされている靴だなと感じる。
サイドだけでなく、つま先部分のコバも光らせることを忘れずに。靴は上からや横から見られることはあっても真っ正面で注視されることはそうないが、愛靴家としてきちんと磨きたい。
左が杉村さんがお手入れしたもの。革の透明感が増し、革が放つ光が右に較べて強いのがわかるだろう。プロダクトを最低限に抑え、革を思いやった背伸びをしないデイリーケア。仕上げも健康的でナチュラルだ。
Y’s Shoeshine
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text_Kumiko Tanaka
○雑誌『Last』 issue.15 『Y’s Shoehineを訪ねて。 静岡を拠点に靴磨きを行う杉村祐太氏が薦めるケアとは。』より抜粋。