愛用の靴、愛着の靴。⑦-ロンドンテーラーのフィッターが魅せられた『エドワード グリーン』の名作ラスト

靴の達人シリーズの第7回。今回ご自身の思い出深い愛用の靴を紹介いただくのは、ロンドンのテーラーでフィッターを務めるサム・L・へガールさん。初めて出会った高級靴『エドワード グリーン』の素晴らしさについて語っていただいた。

甲革と羽根を1枚で取り、スワンネックで縫い目を処理してある「HYTHE(ハイス)」。同じくパンチドキャップで人気モデルの「バークレー」のクラシックな顔つきと比べるとややモダンな印象を受ける。

ロンドンのテーラーでフィッターを務めるサム・L・へガール氏。いまだに更新されない思い出深い靴、『エドワード グリーン』ラスト202の「ハイス」。

左は『ニコラス・トゥーシェク』のレイジーマンシューズ。肌理の細かいボックスカーフがエレガントな木型によく映える。右は昔ジャーミンストリートに店を構えていたビスポークシューメイカー「マクラーレン」のフルブローグ。極上のバックスキンの質感が目をひく。

『エドワード グリーン』のラスト「202」といえば、旧型の発表より同社を牽引してきた名作中の名作。ロンドンのテーラーでフィッターを務めるサム・L・ヘガールさんもその魅力に魅せられたファンの1人だ。

今はなきパリの「オールド・イングランド」で販売員として働いていた10年前に購入したラスト202、Fウィズの「ハイス」は、初めての『エドワード グリーン』、初めての高級靴という思い出深い特別な存在なのだそうだ。「既製品とは思えないほど足によくフィットするし、バーント・パイン・アンティークという色も服とのコーディネイトが組みやすく重宝している」と愛着の深さを語るサムさん。

「ハイス」と出合うきっかけとなった「オールド・イングランド」が惜しまれつつ閉店してからはパリを離れロンドンへ移り住む。現在のフィッターの仕事に就く以前はヴィンテージショップで7年間店長を務めていたため、膨大な量のヴィンテージクローズやシューズの名品に触れてきた。

プライベートでもロンドンのビスポークシューメイカーやノーザンプトンのファクトリーの名品を数多くコレクションしているが、ラスト202の「ハイス」より愛着を覚える1足には未だ出合えていないという。

肩まわりのラインが美しい1960年代サヴィル・ロウ製のツイードスーツにやはりヴィンテージで同系色のシャツ、シルクタイ、ハットを合わせた。装いはミニマルに纏めるのがサムさんのエレガンスだ。

Sam L. Hegard(サム・L・ヘガール) プロフィール
フランス出身。パリのオールド・イングランド販売員時代にメンズウェアの深淵な世界に惹かれ、同店閉店後にかねてより興味のあったブリティッシュ・メンズウェアの見聞を広めるため渡英。ロンドンのヴィンテージショップで約7年を過ごし、幅広い業務に携わる。そこで得た知識や経験を活かし、現在は市内のテーラーでフィッターを務めている。

photographs_Haruko Tomioka, text_Kohki Watanabe
〇 雑誌『LAST』 issue.20 より


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