『EDWARD GREEN (エドワード グリーン)』 ドレスシューズのつくられ方。

ここでは、エドワード グリーンの靴づくりにおける4つのポイントを詳しく取り上げる。

1
Last, Material & Pattern
靴が生まれるための材料。

靴が生み出されるためには、木型やパターンなど、完成した靴からは窺い知れないものが重要である。


アッパー用の革のストックの様子。エドワード グリーンでは特定のサプライヤーからではなく、常に良質な革を、世界各国から手に入れようと奔走しているという。

靴づくりに使用している木型のストックルーム。202など木型番号とサイズごとに収められている。いい木材が入手困難になったため、最近レジン製の木型に移行したという。

つり込み前のヒールカウンターの部材。しっとりと湿っていた。

木型にテーブを巻いて線を描き、それを平面に展開してつくったベースのパターン。最初のパターンづくりの作業はこうした手作業という。その後コンピュータに読み込んでミリ単位の調整やサイズごとのグレーディングを行い、レザーカッターで透明プラスティックのパターンをつくる。

スエードのクリッキング(切り出し)をする様子。プラスティックのパターンをスエードに軽く押し付けるようにすると、毛足に隠れていた切り出す部分のコンディションがよくわかるのだという。

2
Upper Making
靴の姿をつくる工程。

革を組み立て縫い合わせる作業は、いわば靴の外見を生み出す。それはまた職人の技術の集積でもある。


アッパーのパーツの縫い合わせ部分を、薄く削ぐスカイヴィングの工程。美しい仕上がりのための大切な工程だ。

アッパーの縫製の様子。ちょうどアデレードタイプの靴のパーツを縫っているところ。 

ギンピング(ギザギザ状の装飾)の工程、ひとつひとつのパーツにこのように手作業で施されていく。

アッパー裏の加工を行う様子。靴の側面には薄い革のスティッフナーを入れて、剛性をもたせている。靴の表面には表れないが、重要なプロセスだ。

アッパーのステッチの様子。2本のステッチを、一本ずつ縫っていく。間隔の狭い2本のステッチはガイドなどもなく、まさに目の熟練作業である。

ハンドソーンステッチの様子。針でまず革に穴をあけ、その穴にブリストル(イノシシの毛、またはそれを模したナイロン素材の太糸)の針に巻き付けられた糸を通して縫っていく。1日4ペアしか仕上らない、職人の手仕事と時間が生み出す意匠である。オーダーが多い時には職人のピーチ氏は家でもこの作業を行うという。

3
Bottom Making
靴の土台をつくる工程。

生活、歩くための道具としての靴を支える「底」を形成する工程は、丁寧な作業の積み重ねが品質を生む。


つり込み前の仮留めの釘を打っている様子。つり込みの工程では、このように手作業が、機械を使った作業と併せて行われる。

ウェルトとアッパー、ライニングとインソールを縫い合わせる、ウェルティングの作業。

ウェルトを縫う前に、インソールのリブとアッパーをステープラーで固定する作業。より木型に沿った形で縫製するための工程。

つま先部のくせ付けを行うトウラスター。ワイヤーで締めるタイプは、今日では珍しい古いマシン。

つり込んだアッパーをさらにハンマーで叩いて、木型に馴染ませていく。

ウェルトやヒール基部のパーツも配された状態。

インソール裏に粒コルクを盛る作業。ここでも一足一足手作業で行われる。

本底を貼って縫製を待っている靴。底材は湿らせた状態だ。底づけ作業は一日程度時間をおいてから作業される。ラスティングから少なくとも6日から一週間は木型を入れた状態だという。

4
Finishing
仕上げに反映する個性。

靴の磨き、または化粧ともいえるこのプロセスは、シューズメーカーの個性が表れるところでもある。


チャネル(溝)を起こした後、本底とウェルトを縫って行く。このマシンが1970年代製の最終型のブリティッシュユナイテッドの機械。

比較的最近導入されたという、底に圧力を加えシルエットを出す機械。左右同様に圧力を加えられるのが特徴という。

ヒール部はこのように積み上げして形成されている。

トップリフトに一本一本打たれる飾り釘。これもまた手作業で行われていた。

ソールのフィニッシングの様子。アッパーのバーニッシングは同社の個性のひとつだが、この底のナチュラルなブラウンカラーも、エドワード グリーンらしい仕様だ。

スピットポリッシュといわれる、水分を含ませながら行われる仕上げのポリッシュ。1ペアを1時間半で磨く。

『エドワード グリーン』を代表する「ドーバー(DOVER)」のアッパーにブラックスウェードを使用した限定モデル。本記事の誌面掲載時期(2016年10月)に展開された。


photographs_Satoko Imazu
text_Yukihiro Sugawara
◯「LAST」issue11(2016年10月発行)/『ドレスシューズのつくられ方。[既成靴編]』より抜粋。

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